スマートフォンやパソコンにはじまり、私たちが日常的に使う家電のほとんどに利用されている半導体。いまや「半導体を制するものは世界を制する」とまで言われるほどになくてはならない存在ですが、いざ自分の子どもに「なんで半導体が重要なの?」と聞かれても、上手に解説できない人が大半ではないでしょうか。そこで、子どもから大人まで知っておきたい半導体の基礎知識について、現役外交官として活躍する島根玲子さんに、世界情勢をまじえて解説してもらいました。

シリコンバレー
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半導体ってそもそもなに?シリコンバレーの由来

アメリカ西海岸、サンフランシスコあたりの地域を「シリコンバレー」と呼びます。そもそも「シリコンバレー」という名前は、半導体の原料である「シリコン」からきています。

つまり、シリコンバレーとは、半導体を製造する地域というのが語源なのです。

最近、「半導体」という言葉をよく聞きますが、そもそも半導体ってなんでしょう?

電気をとおすものを「導体」と呼びます。「鉄」とか「銅」などの金属が代表的です。反対に、電気をとおさないものを「絶縁体」と呼び、ガラスやゴムなどの素材がそれに当たります。半導体はその中間で、電気をとおしたり、とおさなかったりするもののことを指します。

半導体の代表的な素材がシリコンです。シリコンは、普段は電気をとおさないのですが、ある薬液を塗ったり、特殊な加工をしたりすると、電気をとおすようになります。

このように、電気をとおしたりとおさなかったりする物質、という意味で、「半導体」と呼ばれます。そして、このときは電気をとおし、このときはとおさない、という条件をつけた「回路」と呼ばれるものをこの素材の上に刻みます。

この回路が増えれば増えるほど、より複雑な情報処理ができるようになります。

半導体は、ほとんどすべての電化製品に使われている

IPhone
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半導体は、ほぼすべての電化製品に使われていて、半導体が使われていない電化製品を探し出す方が大変です。スマホ、テレビ、自動車、電子レンジ、洗濯機、すべてのものに半導体が使われています。

とくにスマホには複雑な半導体が必要で、たとえばiPhoneには、150億を超える回路がきざまれた半導体が搭載されています。

このように、現代人の私たちの生活は半導体であふれていて、半導体がなくては成り立ちません。だからこそ、世界は半導体を求めて競い、それが争いの火種になります。半導体をめぐる各国の動きを見てみると、今の世界にどのような対立構造があるのかがわかるのです。

なぜ半導体は「現代の石油」と呼ばれるのか

半導体
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半導体は、わたしたちの身のまわりの電化製品だけでなく、軍事兵器にも使われます。最先端の軍事兵器には最先端の半導体が必要で、強い軍をもつためには最先端の半導体が必要になります。

このように、もはや半導体は国家の命運を握るものにまでなっていて、半導体を制するものは世界を制する、と言ってもいいくらいなのです。

ひと昔前、世界は石油をめぐって争っていました。日本を先の戦争に駆り立てたのも石油です。

1930年代、戦前の日本は、石油のほとんどをアメリカに頼っていました。しかし、1940年の日本のインドシナ(現在のベトナム)進駐をきっかけに、アメリカは日本への石油輸出を禁止しました。

たりなくなった石油を求めて日本は東南アジアに進出し、その後太平洋戦争に突入していくことになりました。このように、日本は石油が原因で戦争にまで発展したのです。

今や半導体は「現代の石油」と呼ばれています。なぜなら、半導体は現代人の生活に欠かせないだけでなく、国家の命運まで握ってしまっているからです。まさに、半導体を制するものは世界を制するのです。

そして半導体をよく見てみると、そこから世界の対立構造や戦争のリスクなど、世界のことがよく見えてきます。

では、半導体をめぐって今なにが起きているのか、見ていきましょう。