娘と自分は違う人間。好きに生きてほしい
すべての画像を見る(全6枚)「高校生のうちに漫画家デビューする」と決め、自身の作風とマッチする媒体を研究、見事にその目標を果たしたひうらさん。
「10代の頃から漠然と、『自分は会社勤めが合わなそう』と感じていたので、早くから“自分の生業”を探していたんですね。今思えばわりと要領もよく、行動力もあった方かも(笑)。
でも、娘に同じようなやり方を求める気はありません。これは不思議なのですが、娘がおなかにいるときから『あぁ、この子は自分とは別の人間で、今はたまたま私が預かっているだけなんだな』と感じていました。それは生まれてからも同じで、娘は、私なら『そんなのサッとやっちゃえばいいのに』と思うこともじっくりと考えてから答えを出す。
歯がゆく思うこともありますが、待っていれば自分なりの方法を見つけ、対処していくタイプなのだなと気がつきました」
ひうらさんがそう言いきれるのは、過去になにかつまずくたび、「なにがイヤなのか」「どうしたいのか」を丁寧に話し合ってきた親子の歴史があるから。
「幼い頃は本人がうまく言語化できないこともありましたし、こちらの思いがちゃんと伝わったのかと悩むこともあったのですが、何年かたってから不意に、『あのときにこう言ってくれてよかった』と言ってくることがあるんです。これはジワジワと効いているんだなって(笑)。『あの時間はムダじゃなかったんだ』と思うと、何年か越しにホッとしますね」
子育てに理想はない。娘の人生があるだけ
夫も含めた家族3人で旅行に行くことも多いという仲のよいひうら家。娘さんは思春期の今も、将来のことや人間関係について思いのほかオープンに話してくれるのだそう。
「悪い男に引っかかりそうになったら?」と質問してみると、「それもまた勉強ですから(笑)」とひうらさん。頭ごなしに否定しない話の聞き方は、家庭内での話しやすい雰囲気につながっているのかもしれません。
「娘の人生は娘のものだから、失敗も経験だと思います。それに、子どもはすごいスピードで成長しているから、気がつくともう思っていた人間じゃなかったりするんですよ。
一度、今までのやり方が合わなくなって悩んだことがあるのですが、ある人に『それは娘さんが成長して、サイズが合わなくなったからですよ』と言われて納得しました。
私は高齢出産だったこともあり、もともと子育てに理想がないんです。同世代とは子育ての段階が違うし、地方暮らしだから東京の“普通”からも距離がある。私にとって、娘は人生のうれしいおまけみたいなもの(笑)。娘が自分の人生を好きに生きられる大人になるまで、サポートしていければと思っています」
ひうら家のひとコマ
東京から関西に移住してしばらく経った4歳の頃。当時の娘は旅行にも連れていくほど「ぽぽちゃん」のお人形がお気に入りでした。
中学3年の終わりに家族でニュージーランドへ旅行。このあと娘は独立して東京で暮らすことになったので、いい思い出になりました。
ひうらさとるさんが50代からの旅の楽しみ方を綴った書籍『58歳、旅の湯かげん いいかげん』(扶桑社刊)は好評発売中。
