「あと伸びする子」の可能性を見落とさない

少年野球をする小学生男子
※画像はイメージです。(画像素材:PIXTA)
すべての画像を見る(全5枚)

これは、ある小学6年生の男の子の話です。母親に連れられて高校受験コースにやって来ました。偏差値は45。塾からは習い事の野球も辞めるよう迫られ、中学受験をやめるかどうかの相談に来たのです。入塾面談の際、彼は終始うつむいていました。

ある日、彼と1対1で話をしました。叱るわけでもないのに、彼は涙をこぼし、「僕はバカなんです」と絞り出すような声で言うのです。彼の自尊感情はボロボロでした。

彼は決して勉強ができないわけではありませんでした。中学受験の日能研・四谷大塚での偏差値は45、高校受験だと「中の上」です。つまり、高校受験組にまわった瞬間、彼はどちらかというと勉強ができる人、という扱いを受けるわけです。

たしかに精神的に幼いところがあり、勉強姿勢にも甘さが見られました。こういう子は、競争の世界からは距離を置いて、じっくりゆっくり育てると伸びます。中学受験をやめる選択をしたあとは、大好きな野球を小学校卒業まで続けることができました。

●中学受験をしない選択で、自己肯定感を取り戻した

その後、彼の性格は一変しました。本来のお調子者、ムードメーカーの性格を取り戻し、中学1年生で初めての定期テストの際には、満面の笑みで点数を自慢してくるようになりました。

中学入学以降は、心身ともに急激に成長し、希望の進路を自分から見つけ、努力できるようになりました。高校受験という壁のほうが彼には合っていたようで、順調に成長しながら、自己肯定感を取り戻していきました。

真面目に授業を受ける中学生男子
※画像はイメージです。(画像素材:PIXTA)

これは、超難関校に合格したサクセスストーリーではありません。ただ、自己肯定感を破壊し、ネガティブ思考の塊にさせてしまう受験もあるということをお伝えしたかったのです。

劣等感をバイタリティに変えられる子どもは、実際にはほんのひと握りです。中学受験の舞台から思いきって降り、高校受験で自己肯定感を取り戻した子の例をたくさん見てきた私だからこそ、言えることだと思っています。

今回は、中学受験に向いている子とそうでない子の違いについて紹介しましたが、このほかにも、東田さんの著書『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと:4万人が支持する塾講師が伝えたい「戦略的高校受験」のすすめ』では、「自己肯定感の育成」を隠れた重要テーマの1つとして、小学生・中学生の子どもを持つ保護者に必読の情報を紹介しています。

※ この記事は『「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと:4万人が支持する塾講師が伝えたい「戦略的高校受験」のすすめ』(Gakken刊)より一部抜粋、再構成の上作成しております。

※ 記事の内容は2024年1月時点のものであり、おもに首都圏の情報を中心にまとめています。また、データのなかには著者が独自で調べたものも含まれています。

「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと: 4万人が支持する塾講師が伝えたい 「戦略的高校受験」のすすめ

「中学受験」をするか迷ったら最初に知ってほしいこと:4万人が支持する塾講師が伝えたい「戦略的高校受験」のすすめ

Amazonで見る