いつ起こるかわからないリスクに対して備えること、という点で共通する防犯と防災。リスクが高まっている現在、どんな心構えが必要なのでしょうか? 国際災害レスキューナースの辻 直美さんと元埼玉県警捜査一課刑事の佐々木成三さんが、命を守るために大切なことを語り合いました。
すべての画像を見る(全2枚)「ええ感じの人」になると周囲に助けてもらえる
辻:防災ってひとりでできるものではありません。災害時、やっぱり頼れるのはご近所さん。タダでできて手っ取り早い防災って「ええ感じの人になること」だと思うんです。ええ感じの人って印象に残るし、その人の家族も気になる。彼らが困っていたら助けようって思いますよね。それには、すれ違ったときに目をそらすのではなく、「こんにちは」とあいさつする。たったこれだけでも“ええ感じの人だな”と思ってもらえます。
佐々木:町を知る、人を知るって防犯でも大事です。見慣れない人がいたとき気づけるか。そして「どうしましたか?」などと声をかけることができるのか。犯罪者にとっていちばんイヤなのは声をかけられることだから。
辻:自治会活動がアクティブなところは防災対策もしっかりしている。風とおしがよくて、それが地域の助け合いにつながるんですよね。
佐々木:地域コミュニティに身を置くと情報をアップデートでき、的確なアドバイスをもらうこともできます。多様な価値観があるコミュニティが重要で、まさにそれが「地域」です。
備えることで生まれた安心が、なによりの効果
辻:私はよく「なにかひとつ、やってみよう」と言っています。なんでもいいからひとつやると、そこから広がるから。アンテナが立つので情報が入るし、見え方が変わる。たとえば、町を歩いていて公衆電話の存在を意識すると、「被災時はここで電話ができる」と認識でき、「テレフォンカードが必要だ」ってつながっていく。
佐々木:準備ができると心の余裕が生まれます。たとえば僕、特殊詐欺対策で「迷惑電話防止機能つき電話」を推奨しているんですね。この電話はかけてきた相手に「録音します」と伝え、迷惑電話の可能性があると注意喚起してくれ、通話を自動録音してくれるんです。
辻:すごく、いいですね。
佐々木:この電話を、親父にプレゼントしたら、「特殊詐欺の電話がかかってきて欲しい」って言うようになったんです。
辻:詐欺電話を楽しみに待っているんですね(笑)。
佐々木:「録音した音声は、お前の仕事で使えるだろう」って(笑)。これって、なによりの効果なんですよ。詐欺電話を撃退することだけでなく、備えたことで生まれた安心が余裕を生み、冷静な判断ができる。
辻:私は家じゅうのものの下に滑り止めシートを敷いているのですが、同じですね。揺れたときも「大丈夫! ちゃんと備えている」と冷静に行動できます。
『ホーム・アローン』のケビン少年を目指そう
佐々木:僕は受け身一辺倒ではなく「攻める防犯」を目指したいんです。映画『ホーム・アローン』のケビン少年のように、泥棒を威嚇(いかく)して迎え撃つ。来るなら上等、戦ってやるよ! って。
辻:私も攻めたいな。災害に対して「いつでも、来い!」という気持ちでいたい。そしてひとりでも多くの人にそんな余裕をもって暮らして欲しいですね。