授業中にウトウトしてしまうのも、LiDのせいかも
すべての画像を見る(全2枚)「LiDの人は認知機能に偏りがあることが多いです。中でも注意力が弱く、またワーキングメモリや処理能力が弱い人であるほど、授業や会議で長い話を聞くのが苦手です」
話の最初の方を忘れてしまったり、集中して聞こうとすればするほど疲れてウトウトしてしまったり…。授業中につい居眠りをしてしまうのも、LiDが関係していることがあるようです。
「ただでさえLiDの方は、相手の人に迷惑をかけたり、自分が困ったりしないようにするため、話を聞き漏らさないよう、聞くことに集中しています。ところが、もともと脳の特性で、注意力や集中力の維持が難しいのも、多くのLiDの方が抱える悩みです。長い話を聞くのは骨が折れます。例えるならば、普通の人が10のエネルギーで聞けるところを30のエネルギーをかけないと、言葉を取りこぼしてしまうのです」
それでも大事な授業などは、特に集中して聞かなくてはならないと気を張ってしまうのがLiD。何気ない会話に比べると聞き逃していけないことばかりですし、本人もそれがわかっているので真剣です。
「しかし、人間の集中力はそう長くは続きません。ただでさえLiDの人は、聞くことにエネルギーを消費しているので、脳が疲れやすいのです。話を聞いている途中に強烈な眠気に襲われることがあります。結果、パソコンが熱暴走をしてシャットダウンするがごとく、急に電源が落ちたように眠りこけてしまう…そんな人も少なくないのです」
疲れずに授業についていくためにできる工夫
自分が発言者となる能動的な授業や会議ならともかく、聴覚情報だけを頼りにするのが苦手なLiDにとって、話を一方的に聞く授業や会議は苦手です。次から次へと流れるように耳に入ってくる話を理解する前に言葉が砂時計のように消えてしまったり、頭の中で音があふれてごちゃまぜになったりするのです。
「授業や会議のような大事な話を取りこぼさないためには、音声だけに頼らない工夫が必要になります。たとえば、文字起こしアプリを使うのは有効な手段です。音声だけを頼りにせず、視覚情報を加えることで、話の理解がグンと上がります。ライブで進む話を視覚でとらえるには、音声を文字に変換する文字おこしアプリが便利です」
先生のおすすめは、「YY文字起こし」「UDトーク」、「Google音声文字変換」、「こえとら」など。最近はアプリの精度も上がって誤変換が減ってきているので、学校で許可がおりれば活用してみるのも手です。
授業中は教科書に集中するという当事者も
書籍内で行ったLiDの当事者の方へのアンケートでは、授業中の対策方法として、下記のような工夫をしていることがわかりました。
「キーワードをメモしてあとから情報を再構成しています」
「大事なことはメモや黒板に書いてもらうようにお願いしています」
「授業は聞き取りより教科書で覚えるようにしています」
「お子さんの年齢や学校の状況によっては一概に“こうすべき”とはいえませんが、聞くことに集中しすぎて疲れてしまうことを避ける方法はたくさんあります。学校に相談して、なるべくいちばん前の席にしてもらう子どももいるようです」
発見しづらい子どものLiD。まずは子どもが話を聞いているか観察し、授業中に眠くなるのはどんなときなのか、聞いてみてもよいでしょう。
LiDは一生つき合い続ける症状。最新刊の『聞いてるはずなのに話聞いてた?と言われたら読む本』(飛鳥新社刊)では、阪本先生によるLiDの最新研究やLiDの原因、当事者アンケートでわかった対処法や工夫などを掲載しています。ぜひ手に取ってみてください。
