聞き取りにくい状況は、工夫次第で変えられる!

コンビニレジ
日常生活でも対処できる場面はあります(※写真はイメージです)
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聞き取りの問題だけに、外からは困りごとが見えにくいLiD。治療法も確立していないため、当事者の方はさまざまな工夫をしているそうです。

「LiDは進行性のある病気ではなく、ひとつの特性/個性です。けれども、LiDに対する世間の認知は十分ではありません。ただでさえ他人からわかりづらい症状のため理解されず、支援の手が遅れているのが現状です。それはとても残念なことだと思います。しかし、現在では簡単に取り入れられる有効な対処法もたくさんあり、それを知ることは、今後の人生にきっとプラスになるはずです」

LiD当事者の方々も、日常的に工夫していることがあるそう。

「たとえば店員さんとのやり取りも、LiDにとっては苦労が多い、代表的なシーンです。コロナ禍に広まったレジ前のビニールシート、マスク越しの会話により、聞き取りが難しくなりました。コンビニでは、お弁当を買うだけでも『レジ袋は要りますか?』 『お箸は必要ですか?』『温めますか?』などさまざまに聞かれます。また、ポイントカードの提示などもあり、レジ前のタスクは意外に多いものです。

ただ、こうした会話は定型ですので、あらかじめ先に伝えておけば、聞かれることもないので、店員との意思疎通の際、ミスマッチを起こさずにすみます。先手必勝ではありませんが、ある程度起こりうる状況や質問を予測しておくだけでも、コミュニケーションがスムーズにいくことは多いのです」

●テレビのセリフが聞き取れないときは…

ほかにもLiDの方が苦手とすることのひとつに、テレビなどの音声を聞くことがあります。

「テレビのような電子機器から流れてくる音は、音質が悪く、聞き取りづらいものです。入れ替わり立ち代わり話す人が変わるドラマは、セリフを追うのがひと苦労なこともあります」

そんなときに当事者の方がよく使うのが、字幕機能です。

「ドラマの字幕は登場人物に合わせてオンタイムで表示されることがほとんどのため、ストレスを感じずに鑑賞できます。字幕機能は、テレビだけでなく、ネット配信の番組、YouTubeでも表示することができます(生放送など字幕機能のずれが生じるものもあります)」

症状とつき合っていくために、肩の力を抜くことも大切

研究途上のLiDですが、原因の多くを占めるのは、生まれもった脳の特性だと考えられているそうです。

「LiDは脳がもつ認知機能の偏り、いわばクセにより起こることが多いため、心因性でない場合は治療法のある病気とはいえません。一般的な病気との大きな違いは、LiDには進行性がないこと。もちろん加齢によって耳の聞こえが悪くなることはありますが、それは老化現象のひとつで、LiDをもつ人だけに起こりうるものではありません。

どんなにがんばったとしても、聞き取れない状況は生じますから、親しい家族や友人と円滑なコミュニケーションをとるためにも、仕事を支障なく行うためにも、自分ひとりで背負い込まずに、周囲の人たちにLiDの特性を伝え、協力してもらうことが大切です」

聞いているつもりなのに「話聞いてた?」と言われたら読む本』(飛鳥新社刊)の中では、LiDのことを人に伝える際の言葉や、周囲に助けてもらいやすくなる声かけ方法なども掲載しています。「聞き取りづらさがあるにも関わらず、頼れる制度がないLiD。自分も周囲も、双方認め合う生きやすい世の中を目指すためにも、これからももっとLiDの理解が広まってほしいと考えています」

聞いてるつもりなのに 「話聞いてた?」と言われたら読む本

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