パリに暮らすマダムたちは「いつも自分軸で考える」「日々の小さなできごとを愛おしむ」など、自分たちの暮らしの範囲で楽しむことに長けています。ここでは、パリ生活で培った自分流の賢い暮らし方を実践している日本人女性のひとり、アーティスト・デザイナーの弓シャローさん(86歳)が、暮らしのなかで大切にしていることを紹介します。

愛犬と夫とともにお茶の時間を楽しんでいるという弓シャローさん
木々が青々と繁るテラスで、愛犬と夫とともにお茶の時間を楽しんでいるという弓シャローさん(86歳)
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ものも気持ちも、ときには手放す潔さを極めたい

弓シャローさん

パリ郊外のすてきなテラスつきアパルトマンで、夫と愛犬のサニーちゃんとともに暮らす弓シャローさん。

27歳で渡仏、イラストレーターやデザイナーなどファッション業界で活躍したのち65歳で潔く仕事を辞めてからは、必要がなくなったものを手放すためのダウンサイジングの時間にも当てているそう。

「身のまわりがものでいっぱいだと、その“もの”に振り回されてしまう。それって、とても残念なこと。空間も心も常にすっきりと暮らしていたい。着なくなった服や使わなくなった小物、食器などは赤十字団体に寄付しています。ジュエリーも、歳を取ると手にシワがでて、輝く宝石がついたリングはなんだか仰々しく見えてしまうでしょう?逆に、40代の姪たちは本物のジュエリーに惹かれる年頃だろうし、実際、それが似合う。だから、本当に思い入れのある指輪をひとつだけ残して、あとは全部姪たちにあげました」 

形見のブレスレット

とてもすてきな叔母様をもって、姪御さんは幸せですねと伝えると、左腕のブレスレットを見せてくれました。

「これは、私の祖母の形見です。祖母の兄で画家だった有島生馬が、イタリアやパリに住んでいた時、妹の志摩子のためにとオーダーメイドした贈り物。丸い金のパーツには、有島家の家紋が彫られています」

弓さんと夫
料理も夫とふたりで。「野菜をたっぷり」がルールです

書や絵にも長け、粋で話も面白く、人気者だったという祖母の志摩子さん。「祖母は105歳まで寝込むこともなく、自分でお手洗いにも行っていました。私も祖母のように、最後までしっかりと自立した人でありたい。だから、健康には気をつけています。それに、不要なものをたくさん残しておくのは、あとに残される人に対して失礼ですしね。夫と息子には『私の亡きあとは、すべて処分してください』って伝えています」と、人生観を語ってくれた弓さん。

「この祖母の形見のブレスレットは、いずれは姪へ贈ることになるのでしょう。有島一族の小さな宝として、代々受け継がれていくことでしょうね」

パリに暮らす日本人マダムの「手放す幸せ」の見つけ方

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