親が高齢になり気になるのが「実家の片づけ」。フランス文化研究者・翻訳家でフランス人の夫をもつペレ信子さんは、夫の母が亡くなったことにより、義父のひとり暮らしを少しでも整えるべく、義母の「遺品整理」を手伝うことに。現在も進行中と話すペレさんが、フランス人の整理収納について感じたことをレポートしてくれました。

フランスの風景
実家の整理は少しさみしい気持ちに。(※画像はすべて著者撮影のイメージ写真です)
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「フランス人は10着しか服を持たない」は本当?

本棚

ひとり暮らしになる夫の父。彼の室内での動線が楽になるように、まずは寝室の日用品の収納を見直すことにしました。夫の実家は、地方にある一般的な一軒家で1階にキッチン、リビングダイニング、そしてゲストルーム、2階にベッドルームという間取りです。

義母が階段を登ることが困難になった数年前に、夫と私で2階の彼らのベッドルームを1階のゲストルームに引っ越してから、当時はものが無かったゲストルームの収納をのぞくことはありませんでしたが、今回見てびっくり。

窓の両側の天井まであるクローゼットは、ほぼお義母さんのものでパンパンになっていたのです。お義父さんの服は家の1階と2階に分散しているとのことでした。

義母は在宅ケアなど受けていて1階だけで暮らしていたこともあり、たくさんの器具・道具もありましたが、洋服とパジャマもとても多かったのです。パジャマの数は30枚近く。毎日ベッドで過ごす彼女なりのおしゃれだったのでしょう。「フランス人は10着しか服を持たない」という訳ではないという以前の記事を地で行く状態でした。

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クローゼット

パジャマは欲しい人はいないでしょうし、廃棄するしかないのではと思っていました。すると義父は「とんでもない。きれいなものは、もらってくれる人がいる」というのです。確かに、洗濯してきれいにアイロンをかけ(フランスにはパジャマでも下着でもアイロンをかける人が結構います)、同じ大きさに畳まれたパジャマの山を見ていると「そうなのかも」と思えてきます。

そして義父が続けます。「じつはコートやおしゃれ着がまだ2階のクローゼットに入っている」と。2階のメインベッドルームのクローゼットのほか、洋服用キャビネットもあるそう。

一緒にその様子を確認して私はものの多さに圧倒されてしまったのですが、義父は「大丈夫、もらってくれる人がたくさんいるから」と言います。

1つのキャビネットには状態のよいコートがたくさん入っていましたが、私たちの帰国後、近くに住む、親戚、知人、お世話になった人に声をかけたら、あっという間に空になったそうです。

「もし、それでも残る服があったらエマユス(ピエール神父という人が始めた、不用品の回収、販売によってホームレスを援助するフランスの慈悲団体)に寄付するつもりだ」とのこと。「捨てる」という言葉はなかなか出てきません。