20代後半で父方の祖父母の「ゴミ屋敷」を大掃除した、漫画家・西園フミコさん。久方ぶりに訪れた一軒家は、外からはごく普通の見た目だったものの、玄関をあけるとそこには足の踏み場もなく天井までぎっしりのゴミ、家じゅうから漂う悪臭…など、想像を絶する光景が広がっていたそうです。
2月に発売された『ゴミ屋敷住人の祖父母を介護した話』(扶桑社刊)では、自身が経験したゴミ屋敷の掃除とその後の介護がリアルに描かれています。今回は、西園さんに当時を振り返ってもらい、そこから得た教訓など語ってもらいました。
すべての画像を見る(全2枚)幼少期から自覚があった、「普通の家じゃない…」ということ
――20代後半で介護を担うのは“若者ケアラー”(18歳からおおむね30代で家族など身近な人の介護や家事を行う)に該当するかと思いますが、当時、同世代への友人たちへのうらやましさや、ねたみといった負の感情はありましたか?
西園フミコさん(以下、西園):業者とともにおこなったゴミ屋敷の片づけがちょうど夏休み期間だったので、バカンスを楽しむ友人たちを見て、「なんでうちはこうなんだ…」みたいな気持ちもありはしました。
ただ、幼少期から日々いろいろな問題が起きていたので、わが家がほかの家と違うというのはだいぶ小さい頃から自覚していて。うらやましいという気持ちよりも、ありのままを受け入れて「もうしょうがない」と、そういう心境の方が大きかったです。
家庭に問題があったといえど、食べものに困るくらいの貧困だったわけでもないし、進学などなにかを諦めざるを得なかったという状況でもなかった。祖父母からの援助もあったようですし、介護の実働の部分は母の負担も大きかった。自分が“若者ケアラー”だったかどうかというと、「うーん…?」という感じです。
大変だったゴミ屋敷の掃除と片づけ。今だから思う「こうすればよかった」こと
――祖父母と疎遠になっていたことを考えると、“避ける”という選択肢もあったのでは…と思うのですが、家族だからこそ投げ出すことができなかったのでしょうか?
西園:他人に迷惑をかけたくないという気持ちもありました。掃除も介護もとても大変でしたが、自分が「無理しない」範囲でできると判断したから行いました。ただ、家族だから「絶対しなければいけない」というワケではないと思うんです。
家族というくくりゆえに、逃げづらいということもあるかもしれない。でも、“しない”という選択ももちろんありで、そこは“自分”を軸に考えればいい気がします。
悩みを抱えている方それぞれに事情があるかと思いますが、私はなにかある度にケアマネージャーさんや清掃業者さんなど、プロの方に「困っています!」と正直に伝えて助けてもらっていました。きっと“家族の問題”だからといって、だれにも頼らずに母と2人だけで抱え込んでいたらつぶれていたんじゃないかな…。