もうすぐ1年が終わろうとしているこの時季、来年に向けて新しいチャレンジなど考えている人もいるのではないでしょうか。過去を振り返れば、挑戦するも、思っていた成果を上げられなかったこともあるかもしれません。そんなとき、「考え方次第で、チャレンジができない人になってしまかもしれません」と教えてくれたのは、公認心理師の川本義巳さん。新しい年を迎える前に、チャレンジできる人になる考え方について紹介してくれました。
すべての画像を見る(全3枚)過去を「これでよかったんだ」と思い込もうとする落とし穴
「失敗しちゃったけど、でもこれはこれでよかったんだ」
このように自分のことを正当化して納得させようとすることはありませんか?
私はあります。
数年前の話ですが、欲しかった大型バイクをカタログだけ見て買ったことがあります。たしかに欲しかったバイクなので、いざ手に入れてみるとあまりに大きすぎて乗りこなすことができず、すぐに手放したということがありました。
そのとき私は「実際に買ったから自分には向いていないということがわかった。だから自分の選択は間違ってなかったんだ」と自分に言い聞かせていました。
●自分を正当化してしまう「認知的不調和」とは?
このときの私のように、なにかうまくいかなかったときや「やりたかったけどできなかった」という経験をしたときに、それを正当化するような考え方をすることがあります。こういう状況のことを心理学では「認知的不協和」と言います。
認知的不協和はその人の中に2つの違う認知が存在するときに起こります。私の場合、
「欲しいバイクを買った」ということと「買ったバイクが乗りこなせない代物だった」という2つはまさに真逆の認知です。このままだと居心地が悪いので「買ってみたから、乗りこなせないことがわかった」という結論をつくり出し、自分の中で折り合いをつけました。
●正当化しすぎてしまうと努力ができなくなってしまう?
認知的不協和は、いろんな場面で起こります。欲しかった洋服を見つけて買おうと思っているうちに売れてしまっていたとき「やっぱりあの服は私には似合わないよね」と思ったり、気になる異性がいるけど声がかけられないというときに「どうせ私なんか相手にしてもらえないし」と声をかけるのをやめてしまうことなども同じです。
たしかに過ぎてしまったことや、あきらかに無謀に思えることにこだわり続けるのもよくありませんから、自分の中で折り合いをつけるというのはとても大事です。私の場合も「せっかく買ったのに乗りこなせなかった」ということを悔やみ続けてみても、お金は返ってきませんし、下手をしたらバイクに乗ること自体も嫌いになってしまったでしょう。
でも、すべてにおいて「これでよかった」にしてしまうのはあまりオススメできません。なぜなら「もう少しがんばれば達成できたのに」ということでさえ、やらなくなってしまう可能性があり、よくないクセのようになってしまいます。