――3つの力、どれも微妙に似ているようにも思えますが、それぞれ違う力ということですよね?

笠原さん
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笠原:そうですね。まず「観察力」は周りをよく見る力のこと。これは特別な技術がいらず、だれでもできますよね。自分の周りをよく観察してみると、店の隅にほこりがたまっているな、花瓶に活けた花が枯れそうだなとか、情報はそこらじゅうに転がっているんです。それに気づくか、気づかないかの違いは、観察力があるかないかなんですよね。

――なるほど、「観察力」は普段の暮らしにも生かせそうですね。家の中や家族の様子を意識して観察すれば、もっと気づくことがありそうな気がします。

笠原:観察力を磨いたら、次のステップは「洞察力」を鍛えること。観察力は目に見えるものに意識を傾けるだけですが、洞察力はその先を読んだり、見えない部分を推測したりする力です。お客さんが食後に薬を出したらさっと水を出したり、左利きの方にはグラスやお箸の位置を変えたりと、よく観察した上で相手に心地いいと感じてもらえるよう先回りをするということかな。

――食事に行ったお店でさりげなく気遣いをしてもらえると、うれしいですよね。

笠原:最後はいちばん難しい「想像力」ですね。これは僕もまだまだ日々試されている気がするのですが、こうしたらこういうことが起きるだろう、相手にこう言ったらこんな気持ちになるだろう、ということを常に考えることです。たとえば、僕はコース料理を食べに行くときは、必ず食事の前にトイレに行っておきます。

料理人からすると、できたてのいちばんいい状態で食べてもらいたいはずだから、コースのしょっぱなからトイレに行くのは相手に失礼かなと思うんですよね。もちろん、コースの終盤に行きたくなるのはわかります。お酒を飲んだりすると僕も行きたくなるので(笑)。これは特殊な例ですが、相手の外見や気にしていることは口にしないなど、日常会話でも想像力は必要ですよね。

――お話をうかがっていると、「観察力」「洞察力」「想像力」という3つの力が必要だということは、あらゆる仕事や家事にもあてはまりそうですね。

笠原:そう、すべてにあてはまるんですよ。観察力を働かせれば、スーパーの特売にもすぐに気づくだろうし、洞察力を発揮すれば家族の体調変化も察知できる。皆さんもこの3つの力を鍛えれば、仕事も家事もスムーズにいくと思いますよ!