●若い人には成長してほしいから、愛情を込めてきちんと怒ります
すべての画像を見る(全3枚)――ところで、厨房で働く若い人にとっては、笠原さんは今や師匠という存在ですよね。世代の違う人たちと、日頃からどんなふうにコミュニケーションをとっていますか?
笠原:僕は店ではみんなから「マスター」と呼ばれています。僕らの時代と違い、今の若い人たちは、上の人を必要以上に怖がらず、フレンドリーですよね。そこがいいなと思います。「マスター、飲みに連れていってくださいよ」なんて、しょっちゅう言われますしね(笑)。お酒が入ると本音で話しやすいから、こっちも言いたいことを言ったり、「マスターの20代の頃はどんな感じでしたか?」と聞かれたり、恋愛相談にものったりしますよ。
――でも、ときには怒ることもありますよね。そうした場面で気をつけていることはありますか?
笠原:僕も年齢を重ねて丸くなったから、言い方もだいぶ穏やかになりましたけどね(笑)。技術的なことはあまり言わないけど、失敗を隠したり、遅刻したのに嘘をついたり、片づけをおろそかにしているときなどは、「それは違う」とはっきり言います。こうしたことをおざなりにしていては、いい料理はつくれませんから。
そりゃ、僕だって毎日鼻歌を歌いながら機嫌よく仕事をしたいけど、そうもいかないこともある。縁あって僕の店で働いてくれている人たちには、成長していい料理人になってほしい。だから、怒ることも必要だと思っています。ただ、気をつけているのは、怒ったあとはその気持ちを引きずらないこと。5分くらいしたらまた普通に話します。あとは1人ばかりを怒らないようにもしています。
――怒ったあとの対処の仕方、気持ちの切り替えも重要ですね。
笠原:まぁ、僕は仕事でいろいろあっても、一日の終わりの晩酌ですべて洗い流しちゃいますけどね(笑)。冷えたビールと気のきいたつまみや副菜があれば、たいていのことはどうでもよくなっちゃうんですよね。
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