●衣類や手紙、写真も徐々に処分
次に衣類のシンプル化を考えるとき、私の頭に浮かぶのはココ・シャネルです。彼女は亡くなるとき数着の黒いドレスしか持っていなかったそうです。衣装に生涯をかけた人の、それが最後の選択だったようです。なお、住まいについていえば、近代建築の巨匠ル・コルビジエの終の棲家は、16m×4mで約20坪の、みごとな小住居でした。
あるのが普通だけど、なくてもいいものは、意外とあります。たとえばキャスターつきのスーツケース。旅行の定番品ですが、私はもっていません。買えなかったからですが、それより在宅時家にどこに置くのかを考え、その大きさにぞっとしたからです。
あのスーツケースは、平地ではラクちんでも、階段で難航したり、着陸時に不明になったり、また、余計な物まで詰め込んでしまう可能性も大です。私は一か月旅行の際も、身から離さず機内持ち込みのバックパックで通しました。日本が誇る老舗鞄のリュックなら、どんな宿でも見劣りはしなかったと思いました。
ところで私は最近、終活の一つとして手紙を捨てることにしました。小学生時代から全部とってあったので、膨大な量でした。しかも住所氏名を切り刻んだので、中断しながら作業に数か月かかりました。
すべての画像を見る(全7枚)家族が撮影好きだったため、写真も膨大な量でした。これはそのまま捨てました。よく「思い出写真がなにより大事」と聞きますが、私は心に蘇るシーンだけで十分です。消えがたい記憶は、日常のふとした時の狭間から鮮やかに浮かび上がって、消えます。私はその瞬間が好きで、アルバムより大事に思っているのです。