――家事が1つでも減ると少しだけ余裕が生まれて優しくなれますよね。これからの夫婦ふたり暮らしを楽しむために、どんなことを心がけていますか?
井上:暮らしている間に生じた小さなひずみは、知らぬ間に大きな隔たりとなり、徐々に会話はなくなります。夫婦がお互いに空気のような存在になると、それはいつしか『いなくてもいい存在なのでは』とも思うように。関係を改善するためには、自分で努力や工夫をしないといけないんですよね。やってほしいことはきちんと伝えたり、相談したり、共通の盛り上がれる話題を提供したりして、この先を過ごしていきたいです。感謝の言葉を互いに伝えることも大切だなと思っているので、折に触れてそんな機会を設けています。
――最後に新刊に込めた思いを教えてください。
井上:この本はブログ読者さんからのリスクエストで完成しました。わが家と同じように年齢を重ね、夫婦ふたり暮らしになってきた方はみなさん、ご主人のためだけにつくる料理にモチベーションが保てないのだと思います。
そして、年齢を重ねるごとに調理はよりシンプルに、手をかけなくてもいいところは省略、よりつくりやすい大人向けの料理へと、私がつくるものも変化してきました。あれこれおかずをつくらなくてもすむよう、1品で野菜とタンパク質が摂れる優秀なおかずがあればいいなと思って、そんなおかずを紹介する本をつくりました。子どもたちが小さなころはあまりつくれなかった、塩やしょうゆといったシンプルな調味料におだしやスパイスをきかせたおかずや、ゴーヤやピーマン、いんげんといったクセのある野菜を使ったおかず、香味野菜がたっぷり入っているもの。どれも煮るだけ、焼くだけくらいでとにかく簡単。そして、子どもに媚びない味が多数掲載されているので、きっとご夫婦で楽しんでいただけるはずです。
『野菜たっぷり! 夫婦ふたりの簡単大人ごはん』(扶桑社ムック)は発売中です。