年を取っても持てる軽いものこそが一生もの、ずっと大切にしてきたものこそが本物
もの選びに向き合ったからこその、「一生もの・本物」についてのエッセイを寄稿してくれました。
●100円のほうき自体は一生ものではありません
すべての画像を見る(全9枚)掃除道具の取材で机の下を帚(ほうき)で掃く写真をカメラマンが撮っていたときに編集者が「腰が痛くなりませんか」と訊きました。「痛くなったら、すぐにやめますよ。そのために掃除機とモップもあるのですからね。
私は毎朝4時半に起きます。最初にすることはパソコンを立ち上げてメールのチェックです。そのときに机の下に綿埃(わたぼこり)を見つけます。部屋は全体が汚れるのではなく、人の居るまわりが汚れます。机の下や台所です。だから、朝はそこだけを帚で掃きます。掃除機ではうるさくて、安眠中の家族を起こしてしまうでしょ」と答えました。
この帚は長さ65cm、180gと軽く、しかも100円です。使っていくうちに先が反ります。ひどくなる前に水をスプレーして乾くまで外に吊るしておくとまっすぐに戻ります。短く薄くなってきたら新しい帚に替えて、庭帚に下ろします。天然素材だけで作られているので、そのまま燃えるごみ収集に出せます。
夫が留守でひとりの時間に掃除機を掛けます。私が留守のときには夫がします。床面積100平米を充電式掃除機でことが足りるのは、帚があるからです。100円の帚自体は一生ものではありません。せいぜい3年です。でも、この軽さなら90歳になっても持てます。ストックもあるので、一生使っていきたいと思う道具のひとつです。