画家の塩谷歩波さん。「ときには無理に切り替えなくてもいい」
銭湯を建築図法によって詳細に描きながらも、いきいきとした人物描写や、温かみのあるタッチが魅力の「銭湯図解」が話題となった画家の塩谷歩波さん。かつては建築事務所で働いていたものの自らを休職まで追い込み、絵を仕事にするようになってからも日常生活そっちのけで絵に集中していたという塩谷さんにとって、銭湯はまさに癒しのサボりスポットだったようです。
すべての画像を見る(全2枚)しかし、自分にとってムリのないスタイルを考えるうちに、「最近は『無理に切り替えなくてもいいんじゃないか』と思うようになってきたんですよね。独立してひとりで過ごす時間が長くなると、怒りや悲しみの感情を引きずってしまうこともあるんですけど、無理に切り替えようとすると逆にストレスがたまる気がして」と、心境に変化があったそう。
塩谷さんの場合、「抱えている感情や考え事を捨てずに煮詰めていく。そうすると、だんだんネガティブな感情が消えたり、問題の捉え方が変わったりするんです」というように、リフレッシュしないでいることが、一歩前進するきっかけになるケースもあるのだとか。ときにはあえてサボらず、向き合うべき感情から逃げないことも大切なようです。
●日々の暮らしを大事にすることだってサボりになる?
とはいえ、日常生活までおざなりにして仕事ばかりしていると、逆に仕事の効率を下げてしまうもの。塩谷さんも「最近になってようやく、生活を充実させると、意外と仕事も充実することがわかってきたんですよ」と語っています。それから必要以上に自炊に力を入れたり、お風呂掃除に異常なまでに時間をかけたりするようになったことで、面倒だと思っていた家事が楽しいものに変わっていったそうです。
家事のほかにも朝のランニングを習慣化するなど、健康的な日常生活を送るようになると、結果的に体調もよくなり、体力がつき、頭も冴えるようになったのだとか。仕事の効率を考えた結果、「生活」にたどり着いたというユニークなサボり論ですが、自分にとってなにが快適で、なにが効率的なのか、一から考えることはあまりないのではないでしょうか。とことん自分と向き合い、トライアンドエラーを繰り返してみると、意外な発見があるのかもしれません。
●「サボり」目線で仕事や生活を考えてみよう
このように、他人からは全然サボっていないように見えたり、当たり前のことのように見えたりする行為も、自分にとってムリなく働き、生活するための最適な方法であれば、ある種のサボりであるといえそうです。
仕事も生活もサボりも、日常においてどれかひとつでは成り立たないもの。こうしたクリエイターのサボり術をヒントに「サボり」という視点で自分を見つめ、心地よく働き、生活できるスタイルを考えてみると、ちょっと日々が過ごしやすくなるかもしれません。