著者であるオコチャさんにインタビュー

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オコチャさんが執筆した『食わざるもの、DON’T WORK』(扶桑社刊)
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そこで、読むと家族に会いたくなるこの物語の生みの親・オコチャさんに、このお話を執筆した動機や、ご自身の料理と家族との思い出について伺ってみました。

●初めて母や妻に“つくってもらうありがたみ”を知った

―――料理を始めたのは2年前のコロナ禍になってからと伺いましたが、料理に挑戦してみたきっかけは。

オコチャさん(以下敬称略):ほかの芸人さんの御多分にもれず、コロナ禍ですることがなくなって、時間つぶしのために始めたのがそもそものきっかけです。料理はほぼ初心者だったので、“レシピを見ながらつくるとそれ通りのものができる”という行為が新鮮で楽しかったので、継続して続けられました。

―――すっかり料理にハマっているみたいですが、どんな心境の変化があったのでしょう。

オコチャ:何事も、やってみるとわかるというのはよくあることですが、自分で料理をつくるようになると、ふだん母親や奥さんに料理をつくってもらうことのありがたみをしっかりと実感できるんです。味もよりおいしく感じるので、それがうれしくて今も継続できているところがあります。

―――オコチャさんがTwitterに投稿されている手づくりのお弁当の画像がとてもおいしそうなのですが、なにかこだわりがありそうですね。

オコチャ:お弁当をつくるときは、冷めても少量でもご飯が進むおかずのチョイスと、弁当箱のフタを開けたときの見た目の充実感、この2つにはこだわりたいと思っています。“制約の中で自分を表現する”という意味で、弁当づくりは僕の大好きな将棋に似ていると思うんです。だから、小さなお弁当箱の中に、いかに自分を表現できるかにこだわっています。

―――「“制約の中で自分を表現する”という意味で、弁当づくりは僕の大好きな将棋に似ている。」とは、オコチャさんならではの感想といった感じですね。ところで、『食わざるもの、DON’T WORK』では、“家族”と“食卓”がテーマのひとつとなっているかと思いますが、小さい頃、家族とご飯を食べた思い出で、印象に残っていることはありますか?

オコチャ:家の食卓ではないんですが、小学生の頃、初めて回転寿司に連れ行ってもらったとき、食べたことのなかったウニを手に取ったら、家族みんなが一瞬、変な空気になったことでしょうか(笑)。食べると口に合わなかったけど、家族の空気を察しておいしくないと言い出せずに飲み込んだときの、変な罪悪感をよく覚えています。

―――さらに、本作では“お母さん”が重要なキーパーソンとなりますが、オコチャさんご自身にとってお母さんはどんな存在でしたか。

オコチャ:自分が産んだという理由だけで、無条件に僕の味方でいてくれる不思議な存在、でしょうか。僕が母親に対して感じる畏敬の念みたいなのは、おそらくそこからきているんだと思います。

兄、妹、父、母、家族それぞれの思いがすれ違いながらも、やがて食卓を囲むことで交流を深めていく…オコチャさんが書いた『食わざるもの、DON’T WORK』では、“家族”と“食卓”がテーマのひとつとなっているかと思いの「第1話 すべてはステーキを食べてから」の冒頭より一部抜粋してお届けします。