アップサイクルしたもので使う人の生活を豊かに
すべての画像を見る(全4枚)たかまつ:伊藤さんは、SDGsについてはどういう印象を持っていますか?
伊藤:僕がこの事業を始めたときはSDGsという言葉はなく、ただ、「もったいない」という気持ちでやっていました。それが、ここ数年で急速にSDGsが広がって…それ自体はいいことだと思っています。一方で、「SDGsウォッシュ」(実態がともなっていのにSDGsに取り組んでいるように見せかけていることの意味)なんて言葉が生まれるようになり、これからはユーザーも本質的であるかどうかを評価するようになるはずです。自戒を込めてですが、今後はいかに深めていくかだと思っています。
たかまつ:先日、よく眠れるベッドが欲しいと、大手家具店に行ったんです。で、マットレスの耐久性やコイルの再利用についていろいろ聞いたんですが、あたふたされてしまって。そもそも答えは用意されていなくて、おそらく聞く人もいない。少しショックでした。
伊藤:まだ、それが現状でしょう。でも、少しずつ変わっていくはずです。消費者が変わればメーカーも変わりますから。
たかまつ:日本のものづくりと消費の課題はなんだと思いますか?
伊藤:表現が難しいのですが、本当にいいものを評価し、お金を払える人が日本には少なくなっている気がします。国内に限らず、伝統的技術を評価できる人に届くようにしないと、技術が廃れてしまう。その意味でも、海外で売れる仕組みをつくる必要があると思っています。
たかまつ:リターンがわかるといいのかもしれませんね。高い金額を払う価値が見えると、消費も変わる気がします。
伊藤:もの自体やデザインがいいのは大前提として、その背景やストーリーも伝えていく必要性はありますね。今は捨てられているものでも、ものとしていいものはたくさんあります。そこに焦点を当てて、新しいものと組み合わせる、もしくは場所を変えることで、ものを生き返らせる。それによって使う人の生活が豊かになったらいいと思っています。
たかまつ:家財のアップサイクルってあまり聞かないですし、伊藤さんの試みがもっと広がるといいと思います。一方で消費者にできることはありますか?
伊藤:いいものはちゃんとした値段で売れますから、リセールバリューがあるものを選ぶといいと思います。ただ、やはり、自分の琴線に触れるかどうかがいちばん。それが生活の豊かさですから。
●教えてくれた人:伊藤昌徳さん
1988年北海道生まれ。2017年、富山県高岡市に移住し、「家’s」を創業。再生した古家具のサブスクリプション事業や廃棄ロスを最小限にしたサーキュラー(循環型)リノベーション事業などを展開