引き取り希望でいちばん多い家具はタンス
すべての画像を見る(全4枚)たかまつ:アップサイクルできるのは、古くてもきちんとつくられた家具ですよね。どうやって集めるんですか?
伊藤:お問い合わせをいただいて、僕がクルマで引き取りに行っています。
たかまつ:引き取ってもらいたいという家具は、どんなものが多いんですか?
伊藤:テーブルや小物もありますが、タンスが7割以上を占めます。今の住宅はクローゼットがあるし、昔ながらのタンスは大きくてジャマ。言い方が悪いですが、いちばんいらないのがタンスなんです。そのタンスをサイドテーブルやテレビ台など、タンスとは違う用途で使えるようにアップサイクルするわけです。
たかまつ:「タンス=服の収納」にとどまらず、価値をつけて別のものにするというのはすごいことです。
伊藤:タンスはそもそも木でできた箱だから…と抽象化して考えていきます。ただ、それが大変なんですけどね(笑)。
たかまつ:家具の処分って、すごくお金がかかるんですよね。引っ越しのとき、テーブルを捨てるのに3万円は払えないと思って、無料で引き取ってくれる人を必死で探しました。困っている方はたくさんいると思います。
伊藤:地方は空き家問題が深刻で、財産整理しなくてはいけない物件がたくさんあります。空き家の残置物にはタンスだけでなく、さまざまなものがある。それらを流通させるのがミッションです。
たかまつ:空き家の残置物はそんなにリサイクルしにくいのでしょうか。
伊藤:空き家にある残置物――家具や雑貨の9割が捨てられています。骨董的な価値があり、引き取られるのは1割。でも、残された9割の中にもいいものがたくさんあり、それを流通させる仕組みをつくりたい。骨董マーケットで流通するかどうかではなく、「いいものをちゃんと残す」ことをしていきたいんです。
たかまつ:伊藤さんが空き家に行って、何割ぐらい回収できるのですか?
伊藤:9割のうち1〜2割です。それ以外は捨ててしまっているのが現状です。ただ、売り先を海外に広げられれば、さらに1〜2割は流通に戻せるはずです。
たかまつ:海外市場では日本文化へのニーズが高いということですか?
伊藤:身近なものに対しては価値を感じにくいけれど、距離を離すと評価が変わるということは間違いなくあります。
たかまつ:歴史を評価するという点で、海外との相性はよさそう。イギリスでは、100年前のお皿が普通に売られていたり、めちゃめちゃ寒い家でも「歴史があるからいい」って言ったりしますし。
伊藤:昨年、サンフランシスコのヴィンテージマーケットに出品し、まだ、「ジャパン」にブランドはあると感じました。たとえば、御神酒のおちょこをテキーラショットとして提案するなど、現代的な解釈も受け入れられやすい。用途も自由に発想してくれるので、海外マーケットでは手を加えることなく、そのままリユースしてもらえると考えています。
たかまつ:ただ、タンスに関しては、今の若い人はわざわざ買いませんし、いずれ、アップサイクルする家財はなくなってしまうのでは?
伊藤:そうなったら僕のミッション達成。それでいいと思っています。一方でサブスクは僕が所有者なので、ずっと続けられる。夢物語ですが、将来的に大きな倉庫を持ち古きよきものを集めていけば、それを循環するだけでビジネスにできるのではないかとも考えています。