●小さいことの積み重ねが大事

中道 ましてや、平野先生のお店は、京都の中でも、田の字地区と呼ばれる中心地にありますから、3歩くらい先を進まれていましたよね。

平野 振り返ったら、そうなのだけれど。その当時は無我夢中で、そんなことは何も考えていないです。最初の生徒さんはひとりですよ。御所の近くにある武者小路通の実家2階のキッチンを借りて始めましたが、誰も来ないし。通りに看板を立てたら、ひとりふたりと増えてきて。そしたらたまたま京都新聞の記者が看板を見て、結構大きな記事を書いてくれました。それからです。生徒さんがものすごく増えました。
あるとき、生徒さんから、「こんなおいしいケーキなら、お店を出されたらいいのに」と言われて、真に受けたのです。そして、今も同じ場所で営業していますが、烏丸御池の高倉通りに店舗兼お教室をオープンさせました。

中道 私がスコーンを食べたのは松之助が初めてでした。平野先生のところは私にとって、本当にいろんな意味をもっていた特別な場所です。

平野 お店はなんとかオープンしましたけど、最初は赤字でしたね。レッスン代でなんとか帳尻が合っていました。その当時、よく考えていたのは、「おかあさんが手づくりケーキをお子さんに食べさせたら、子どもは絶対にグレない、だから、ぜひつくってあげてほしい」ということでした。

中道 私もまったく同じ意見です。少々悪いことをしても、胃袋さえつかんでいたら、戻ってくると思っていました。

平野 レッスンで習ったすべてのケーキをつくらなくてもいいから、「自分が好きなケーキだけ、週1回つくってあげて」と話していました。お子さんが大きくなられたら、「バレンタインデーやホワイトデーのお菓子を一緒に手づくりしてね」と。そうした小さなことの積み重ねは、子育てに限らず、仕事でも、人間関係でも、何においても大事だと思います。

●起業するなら、リスクがあってもひとりでやるべき

平野さん
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中道 50歳でブログを書き始めましたが、それが仕事になるとは思っていませんでした。ただし、ひとつ決めたことがあって、それは「毎日投稿すること」。書きたいときに書くスタイルではきっと長続きしないだろうし、60歳になったときに自分で自分をほめられるようになっていたいと強く思っていましたから、そのためには毎日投稿するのが大変だけといちばんの近道だと思ったのです。
アクセス数が増えなくても、あきらめずに続けました。徐々にスキルアップして、ブロガーから著述家としてのお仕事ができるようになり、ホームページ&アメブロ集客コンサルティング、ブログ講座、個人向け起業サポートといった起業も叶いました。

平野 中道さん、コツコツと努力してお仕事を着実に軌道にのせてこられたのね。これから何かを始めようと考えている方に、ひとつだけアドバイスするとしたら、どんなにリスクがあっても、「ひとりでやりなさい」とお伝えしたいです。心配だから友だちと一緒に起業するのはやめたほうがいい。

中道 私も大賛成です。どんな職種でも、ひとりでがんばったほうがいい。どんなに親しい間柄でも、だんだん意見がズレてきます。そこで妙に気を遣ったりするとストレスがたまって、やがて不平不満になっていきます。また、失敗したときに相手のせいにすることにもなりかねないから、私も今はっきりとアドバイスできるのは、そのことですね。

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