タイル、サイディング…押さえておきたい外装材のメリット・デメリット
外壁材の種類は多種多様です。ここでは素材ごとに大まかに5つ紹介しますが、これ以外にもALC板やコンクリート打ち放しなどがあり、それぞれに長所、短所があります。それを理解したうえで外壁素材を選ぶことが後悔しない家づくりにつながります。
●タイル
すべての画像を見る(全12枚)高級感のある外観がタイル外壁の身上。メリットは見た目だけではありません。汚れやキズに強いタイルはメンテナンスの間隔が他の外壁材よりも長く、ランニングコストが抑えられます。
もちろん耐久性も抜群。的確なメンテナンスで数十年後も美しい外観が保てるでしょう。問題は初期コストですが、トータルで見れば、決して高価ではありません。
●金属製サイディング
表面に意匠が施された金属板に断熱効果のある裏打ち材で構成された外壁材。工業製品ならではの均一な仕上がりと、素材の軽さが大きな特徴です。
標準化された施工方法があり、工期の短縮が図れるほか、素材特性として表面のひび割れや凍害の心配がありません。また、定期的に清掃すれば寿命が延び、再塗装などのメンテナンスもほとんど不要です。
●窯業系サイディング
もっともポピュラーな外壁材。主にセメントに繊維質を混ぜて板状に加工し、外壁材にしたものです。
デザインの自由度が大きく、カラーバリエーションも豊富。一見タイルやレンガ張りと見間違うような製品も多くあります。他の外壁材と比べて初期費用を低く抑えられ、施工期間も短縮できます。耐火性が高いのも大きなメリットといえるでしょう。
●木質系サイディング
無垢の木材の表面を加工して耐火性、防水性などの機能を加えた外壁材。現在では金属や窯業などのサイディングに取って代わられ、日本ではあまり使われなくなっています。
しかし木材が本来持っている断熱性の高さや、自然素材ならではの質感の高さ、高級感から根強い人気があります。水分による腐朽を防ぐために、定期的なメンテナンスが大切です。
●左官仕上げ
塗り壁はモルタルを下地にして、塗装や塗り方によって模様をつける外壁仕上げの手法です。色もデザインも自由自在。表面の仕上げ材も下地のモルタルも不燃材となるため、防火性に優れます。ひび割れやすく汚れやカビに弱く、メンテナンスの手間がかかるのがデメリットですが、表面コートなどのセルフクリーニング機能も充実。機能的に改善されてきました。
「私は有機的なものが好きなので、手がけた住宅の外装は8割くらいが左官仕上げです。外壁には奇抜なものは使わずに、色調も周囲に調和するようなものがいいと思います。同じ敷地に棟を分けて建物を設計するような場合には、母屋は左官仕上げでも別棟はガルバリウムの外壁にするなど、正反対の特性をもつ素材でメリハリをつけることもあります」(玉木さん)。
押さえておきたい屋根材。種類とメリット・デメリット
●金属系
金属系屋根材の最大のメリットはその軽さです。屋根が軽ければ建物の重心は低く抑えられ、地震や風に対する耐力が向上します。地震国の日本においては非常に重要な要因といえるでしょう。金属系の屋根材にはガルバリウム、ジンカリウム、トタンが一般的。耐久性では石粒などが表面にコーティングされたジンカリウムが優位となります。
●窯業系
窯業系屋根材は、大別すると粘土系の瓦とセメントを素材としたスレートがあります。粘土を成型して釉薬をかけ、高温で焼成した粘土瓦は日本建築でおなじみです。重量があり構造上は不利ですが、「焼きもの」なので塗装によるメンテナンスは不要。一方スレートはセメントに合成繊維を混ぜて薄い板状にしたもの。軽量ですが、メンテナンスは必要です。
「私の場合、屋根に関しては、地震を考えて軽量な部材を用いることがほとんどです。窯業系の屋根材は重厚な外観が魅力的。最近は軽量なものも増えています」(玉木さん)。
●その他
そのほかの屋根材として一般的なのは、グラスファイバーなどにアスファルトを塗装し、表面を石粒でコートしたアスファルトシングル、屋上が平らな陸屋根に用いられる防水仕上げなどです。
軽量で耐久性に優れたアスファルトシングルは比較的安価なのが特徴。防水仕上げの陸屋根はメンテナンスが容易で、屋上としても利用できるのが特徴です。
教えてくれた人:玉木直人さん
一級建築士。1964年、岐阜県生まれ。GA設計事務所を主宰。東海地方を中心に活躍する建築家。敷地条件を生かし、建主の要望を実現する設計力には定評がある。とくに庭や緑を取り込むコートハウス、アウトドアリビングのある家にはファンが多い