80代の両親と50代娘のkikiさんで結成された、バッグをつくる裁縫チーム・G3sewing(じーさんソーイング)。お金もやることもなく、病気でほぼ寝たきりだった80代の父が、バッグづくりという意外な生きがいを見つけたことから、SNSを中心に話題になっています。父とkikiさんがここに至るまでは、いろいろなことがあったと言います。このたび出版したばかりの『あちこちガタが来てるけど 心は元気! 80代で見つけた 生きる幸せ』(KADOKAWA刊)から、その裏側を紹介します。

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病気がちで貧乏だった80代の父が「がま口バッグ職人」に。50代娘が支えてきたこと

孫のアイデアで、商品の注文が殺到。家族みんなで叶えた夢

ソーイングチームのメンバーは80代両親と娘のkikiさんの3人。おもに、職人の80代の父(=G3・じーさん)のつくったがま口バッグ、トートバッグ、お茶碗型ポーチ、お薬手帳がま口などをネットで販売しています。

もとはG3が趣味として始めた裁縫。しかし、生地やファスナー、スナップなど、材料にもお金がかかります。G3の年金は月3万円ほど。病院代や薬代でほぼなくなってしまうので、自分では買えません。

そこで、G3の娘の三姉妹でお金を出して生地を購入。しばらくG3の生き甲斐を続けられることになりましたが、でき上がったものを売って材料費を捻出しないと、いずれは行き詰まります。

G3のミシンの腕が上がって、kikiさん自身が買ってもいいと思うようながま口バッグが完成。せっかくつくったがま口バッグをもっと広めたいのですが、どうしたらいいのかわかりません。そこで…。

 

●Twitterにアップしたところ、想像以上の反響が

おじいさんの画像比較
右は2020年7月にTwitterにアップしてバズった写真。左は生きがいを続けた約8か月後、より元気になった写真です
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kikiさんは苦しい事情を、18歳の息子(G3の孫)に打ち明けました。

「今まで親に無関心だったので、何かを期待して話したわけではありません。でも、ちょうど反抗期を抜けた時期だったのか、息子は『おじいちゃん、その歳ですごいな。Twitterを使ったら、もっと広がるよ』とアドバイスしてくれました。さらに、『がま口バッグは私がつくっていることにしよう』と言ったら、『そんな人たくさんいるから売れへんよ。おじいちゃんがつくっていることを、ちゃんと出したほうがいいよ。名前はG3sewingな』と、アカウントもつくってくれたんです」と、kikiさん。

 

息子の若い感性を信じ、G3の写真とともにがま口バッグをTwitterにアップしたら、思いがけずにバズりました! そして注文が殺到したのです。

それがきっかけで、G3とB3とkikiさんの3人で、本格的にG3sewingを始めました。

おばあちゃん
G3sewingの精神的な支柱は、母のB3(=ばーさん)。明るい笑顔で、G3とkikiさんを支えています

G3はこう言います。

「何もしないとボケてしまう。どうやって死のうかと、死ぬことばかり考えていた。家族には怒られてばかりだし、金を使うのは病院代だけ…。G3sewingをしていなかったら、死んどったと思う」

そんなG3でも、生きる希望を取り戻したのです。