●子どもの頃の感覚を取り戻せる場所に
僕は子どもの頃も団地に住んでいました。あの頃の感覚を取り戻せる場所にしたいと思ったので、当時好きだった昭和のキャラクターのハンガーフックやリンゴ箱、レトロな柄の茶箱、柳行李を使って収納しています。
すべての画像を見る(全6枚)リンゴ箱は野菜の直売所に片っ端から電話をかけて安く譲ってくれるところはないか聞きました。普段人見知りの僕ですが、居心地の良い部屋つくりのためだったら苦労もいといません。ちなみに外した襖は、リンゴ箱の後ろに重ねて収納しています。
茶箱は初めて、知らない方と待ち合わせをして引き取らせていただきました。当日、ドキドキして指定された場所に向かうと優しそうなおじさんが車で来ました。実は茶箱というのは茶葉を守るために調湿機能があります。おじさんから茶箱の中になにを入れる予定かを聞かれました。
僕が『まだ入れるものは決まっていませんが、インテリア用です』と答えると、まさか30代半ばの男がインテリアで使うなんて思っていなかったのでしょう。おじさんが目をまるくして不思議そうな顔をしていたのが忘れられません。
その帰り道、車を運転しながら思ったものです。他者にとってはもう役目が終わったものでも、僕にとっては違う表情をみせてくれるということ。そこに美しさを見出せることが嬉しくてたまらないのだということ。
今、あのおじさんに伝えたいです。あなたが譲ってくれた茶箱には、ガラクタだけど僕にとっては思い出のものたちを大切にしまっています、って。