新作は節約がきっかけのサスペンス…?

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尾崎:『三千円の使いかた』はホームドラマチックでほのぼのとしていたのが、新作の『財布は踊る』はよりシビアというか、サスペンスな雰囲気もありますね。

原田:若い主婦がずっと欲しかったブランド物のお財布を手に入れるところから始まるので、最初は家族の物語なんです。が、その財布が持ち主の手を離れて転々とするうちに、いろんな人に関わっていく。前作は家族の家計の物語でしたが、今回はもうちょっと経済をテーマにしよう、というか、いろんな人を描きたかった。借金の返済に苦労している人も出て来るし、犯罪に手を染める人も!

尾崎:お金の使い方とか借金についての考え方とか、ちょっとしたことが人生の分かれ道になっていくんだな、というのがすごくリアルでした。

原田:だれもが一歩を踏み出す物語なんです。その一歩はきっと人生のターニングポイントなんだけど、踏み出したことが必ずしも幸せにつながるのかどうか、それはまた別な話。お金というのは力なんですよね。その力を手に入れたり、あるいはそれにしばられたりする中で、人の考え方がどう変わっていくのか…

作品に若い男性がふたり登場するんですが、1人は犯罪者に、1人は地道に家庭を築く。その違いはほんの些細なことでしかないんですよね。自分の暮らしやお金のことを、ちょっと立ち止まってきちんと正すことができた人から、幸せをつかんでいく。そんな物語にしたかったんです。

尾崎:ここ数年、ものを「捨てる」がブームになって、少ないもので賢く暮らすのがオシャレ、スマート、っていう価値観に変わってきましたよね。そのあたりも、暮らしを正した結果なのかな、と思いますね。

●暮らしを正した結果、「投資」が身近なものに

原田ひ香さん

尾崎:今回は不動産投資の話題も出てきますが、比較的夫の言いなりだった専業主婦の主人公が夫の借金をきっかけにお金について考え始めて、ついには小規模ながらも不動産投資までするようになる。これはすごい成長ですよね。

原田:決して便利な立地ではない場所の中古物件を安く買って、経費をかけずに自分で改築して貸し出す。不動産業界に詳しい人には目新しい話ではないでしょうが、知らない人はまだまだ多い。そんな「へえ!」と思えるようなことを盛り込むのも、小説のおもしろさだと思っています。

尾崎:今やNISAやiDecoなどもあって、投資というのがとても身近になってきていますよね。

原田:ツイッターなどで金融関連の書き込みをチェックしていますが、投資は男性だけのものではないし、節約も女性だけのものではなくなってきていますよね。男性でもポイ活にいそしんでいる人はたくさんいますし。