自分から動くことは、未来を変えるいちばん手軽な方法
すべての画像を見る(全2枚)[20代の一田さんの悩み]誰かに「会いたい」って、なかなか言えない。
[50代の一田さんが伝えたいこと]自分から動くって、未来を変えるいちばん手軽な方法なのかも。
●誰かを誘うことが苦手だった自分
私は、「ご飯を一緒に食べに行かない?」「あの展示会に一緒に行かない?」といったふうに誰かを誘うことが苦手です。「あの人と話してみたいなあ」と思っても、「向こうから誘ってくれればいいのになあ」と思いながら、月日が過ぎていく…。そんな繰り返しだったんだよね。
そんなある日、吉祥寺にあるカフェ「コロモチャヤ」の中臣美香さんからFacebookのメッセンジャーで連絡をもらいました。前の年に出産したばかりの美香さん。「お散歩でイチダさんちの近くまで行くから、もしお時間あったら、遊びに行かせていただいていいですか?」って。
「どうそ、どうぞ~!」と返事を打ちながら、あれ~? 美香さんってこんなキャラだったかな? と不思議に思いました。しっかり者だけど、自分から誰かに会いに行くというタイプではなく、どちらかといえば控えめ…。我が家のリビングで、お茶を飲みながら「珍しいねえ」と聞いてみると…。「今年の目標は、自分から行く!」なんだとか。
出産したばかりの時期、外にも出られず、部屋の中で赤ちゃんと2人きり。「自分の思い通り動けないってことが、こんなにもつらいことだと知りました」と教えてくれました。友達は、「何か手伝えることがあったら言ってね」と言ってくれるけれど、「手伝って、なんて言えないんですよね、私…」と美香さん。
そんな時、ある友達が「今からベビーちゃんに会いに行っていい?」と、鍋いっぱいに作ったスープを持って、遊びに来てくれたそう。そんな体験を経て、美香さんは「何か手伝えることがあったら……」と言うよりも、自分ができることを見つけて手伝っちゃう! とスイッチを切り替えたんだって。
●「自分から動く」ということの力
美香さんが知ったのは「自分から動く」ということの力。我が家に遊びに来てくれたのも、その延長線上だったというわけです。私も、誰かが病気になったり、忙しそうだったりした時、「何かできることがあったら」とメールをしていたことを思い出しました。あれって、単なる挨拶に過ぎなかったのかも! と深く反省。
その後しばらくして、よく一緒に仕事をしている知人のコロナウイルス陽性が判明。軽症だったものの、自宅隔離の状態になりました。しかも1人暮らしなので、さぞかし心細いだろうなあと…。そこですぐに思い出したのが美香さんとのやりとりでした。「そうだ! 今すぐ動かなくちゃ!」と、レトルトのおかゆやスープ、果物、羊羹などを段ボール箱に詰めて送りました。「わあ、私にもできたじゃん!」とちょっと嬉しくなりました。美香さんに教えてもらったおかげです。
●自分から動けば、いろいろなことが変わるかもしれない
これを機に、もしかして自分から動けば、いろいろなことが変わるのかも? と考えるようになったんだよね。今まで出会った素敵な先輩たちに「もうちょっとお話、聞きたいんですけど」って言えたら、自分ひとりでは行けなかった場所に連れていってもらえたのかも。
先輩だけじゃなく、年下でも、立場や職業が違う人でも、遠く離れた場所に暮らす人でも、これからピピッときたら会いに行ってみようか。ITリテラシーをアップするためのノウハウを教えてもらうのもいいし、私が知らない今ちまたで流行っていることに耳を傾けるのもいいかも。そんな想像をすると、なんだかワクワクしてきました。もっと早く気づいて、行動すればよかったなあ。
●小さな違いが、きっと世界を大きく変える
でも、自分から行動するには、自分に「余白」がなくちゃできないよね。若い頃、誰かに声をかけられなかったのは、怖がりで、いいかっこしいだったからと、もうひとつは、自分のことだけでアップアップだったからだろうなあ。誰かに声をかけてみるって「絶対にやらなくちゃいけないこと」じゃないでしょう? それでも、自分の心と時間と手間を使う…。もしかしたら、そんなゆとりが、50歳を過ぎた今だからこそ、持てたのかもしれません。
50代というだんだん先輩が少なくなってくるお年頃ではあるけれど、何歳になっても、素敵な誰かに会ってドキドキしたい。そして、そこから先にある「つづき」の時間を、これから楽しんでみたい。「教えてください」って言えるか、言えないか。その小さな違いが、きっと世界を大きく変える。その風景を見てみたいなあと思っています。
『もっと早く言ってよ。50代の私から20代の私に伝えたいこと』(扶桑社刊)には、ここでご紹介した以外にも、一田さんが年齢を重ねて気づいた人生を豊かにするヒントがたっぷりつまっています。ぜひチェックしてみてくださいね。