●みんなでコロナに打ち勝っていくために

そんな北海道の農業・酪農も、コロナの影響を大きく受けました。なかでも、意外と知られていないのが、「農家・酪農家」さんへの影響です。

「食品業界というくくりでは飲食店さんには手が差し伸べられていたりしますが、食事のスタートでもある農家さんや酪農家さんにはじつはそこまで支援がされていません。コロナ禍で給食の供給停止や外食自粛によって、元々そこに食材を卸す予定だったものがすべてストップ。『消費は落ち込んでいるから、供給を止める』というのは命ある農作物において、大変難しいことなんです」

熱く語る森崎さん
先日行われた「北海道地チーズ博 2022」でも、その熱い想いを語ってくれました(提供写真)
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だから、行き場のなくなった食材が余ってしまうという事態に…。年末年始に懸念されていた生乳の廃棄問題もその一つ。森崎さんは、昨年12月に各企業と「#ミルクに恩返し」というプロジェクトを立ち上げ、SNSで発信しました。

「レシピなどを発信し、たくさんの方のご尽力のおかげで廃棄は免れました。私たちは、コロナが落としていったものに対して1個ずつ打ち勝っていくしかない。だから、こういう風にニュースを苦しいものだけではなく、明るくお祭り化し多くの人を巻き込めば、いろんなものに勝てる気がしました。今回はミルクだったけど、それはほかの食べ物でも同じ。私たちは取り戻していくことができるんです!」

この日、「北海道地チーズ博 2022」のイベントに登壇した森崎さんは熱くその想いを私たちに伝えてくれ、その姿はとても印象的でした。

●「#ミルクに恩返し」の次は「お米に恩返し」

そんな森崎さんが次に考えている支援企画が「お米」。意外かもしれませんが、じつは今お米離れが進んでいる影響で、お米が余っているそう。私たち日本人が昔から食べているお米にそんなことが起きていたとは驚きですよね。

「お米は消化にもよくて、おいしい。その米を私たちは裏切るわけにはいかないんです。とくに一昨年採れた、『古米』が余っていて、新米ももちろんおいしいのですが、古米には古米のよさがあります! だから、今回は私がおいしい古米の使い方についてお伝えしますね」

明るく答える森崎さん

「新米は、水分をたくさん含んでいるのでそのまま炊くだけでもおいしいんです。一方古米は、乾燥して水分が飛んでいるため、雑炊やリゾットなどの外から味を染み込ませていきたいものにぴったり。だから、おうちの手巻きずしのシャリは古米にお任せを! 乾燥した古米に、すし酢、塩、砂糖を調合したものをいれると、おいしく仕上がります」

森崎さんによると、リゾットの本場・イタリアでは、5年・10年古米の価格にプレミアがついているそうです。それはイタリア人が古米の価値を知っているからこそ。古くなったからと言って、それらすべての価値がなくなってしまうわけではありませんよね。

地チーズ
「北海道地チーズ博 2022」に出展された北海道地チーズの一部

使う用途を知ることで、もったいないがなくなる。だから僕はその使い方の発信をしていきたい! じつは土地の生乳を使用した“地チーズ”にも同じことが言えるんです。ついつい使い切らなければ…! とプレッシャーがあるかもしれませんが、1日目はそのままお酒などのあてに食べていただいて、余ったものは料理などで使えばチーズを多方面から楽しめます。地チーズは時間をおくことによって、そのつくり手である工房さんの個性が出てくるんですよ。ぜひ北海道の地チーズも楽しんでほしいです」

北海道農業の魅力を発信し続ける森崎さんは、食品ロス問題にも真摯に取り組んでいます。私たちも、まずは「興味をもつ」というところから向き合っていきたいですね

なまら…北海道の方言で、非常に、とても

◆後編の記事はこちらから◆

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