●自分を励ます言葉「やってみはったら!」

平野さんの人生はまるでジェットコースターのように急展開しています。願いをすべて叶えた勝ち組の人生に感じられますが、「そんなことはありません。本当に普通のおばさんですから」と平野さんは自分を特別だとは感じていません。

何の後ろ盾もないのにここまでやってこられたのは、さまざまなご縁を大切に紡いできたことと、自分を励ます「やってみはったら!」の心の声に素直に従ってきたからだと回想します。

「やってみたいと感じたことは、やってみる。やらへんとわからへんわ、と思うのです。やってみた結果、成功しても失敗してもそれは単なる現象で、やってみたことに意義かあるし、大事なんじゃないかしら。辛い経験からも学ぶことはありますよ、すぐにわからなくてもね」

やるだけやってみる。そして、その先の結果は、自分ではコントロールできない神の領域だからあれこれ考えても仕方ないので、積極的に待ってみようというのが平野流。人事を尽くして天命を待つのです。

それは、留学したときも、日本に戻って店舗を出したときも、ニューヨークで開業したときも、また、再婚しようと決めたときもそうでした。

たとえば帰国後、京都の中心地に教室兼店舗をオーブンした21年前、まわりの人から、「正気の沙汰じゃない」「成功するはずかない」といわれましたが、「なんとかなるわ!」と自分を信じて突き進みました。

「不安はゼロではないけれど、やらへんとわからへんわ、でしょう(笑)」

 

●人生はシナリオ通りに進まない

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70歳を過ぎた今、たくさんのものは要らなくなりました。今は一日一日が大事です。心豊かに生きていくにはどうしたらいいか考えていきたいから、「今を生きる、が今の心境ですね」と平野さん。

 

平野さんは「60歳から年は数えない」と決めています。それは60歳になる頃に、人生はシナリオ通りには進まないものだと痛感し、「何歳で何をしよう」とあらかじめ計画を立ててもあまり意味がないと思ったからです。

そのかわり、残りの人生は丁寧に歳を重ねていこうと考えています。

今、朝起きて、まず考えるのは、「さぁ、今日はどうやって豊かな気分で過ごそうかしら」ということです。といっても、取り立てて特別なことをするわけじゃなくて。モーニングコーヒーを飲んで、身支度と薄化粧をして。買い物や散歩に出かけたり、家で食事をしたり、映画を見たり。たまには遠出して趣味の釣りやスキーを楽しむ。何でもないごく普通の営みですが、そこにキラキラとした喜びや豊かさを感じるようになりました。

「そんな小さな幸せをじっくり味わう生活なんて、再婚するまで、私の人生にはまったく縁がありませんでした。それはパートナーのおかげです」

再婚ライフには煩わしいこともたくさんあるけれど、ひとりで生きようが、ふたりで生きようが、「どっちにしろ、大変なことがあるのが人生でしょう」と平野さん。

 

人は年齢を重ねるほど最初の一歩がきつく、踏み出しにくくなりがちです。でも、自分の中からわき上がる「やってみはったら!」の心の声に素直に従えば、年齢に関係なく前向きな生き方ができるのですね。失敗すら肥やしにする、パワフルな人生の体現者、それが平野さんです。平野さんの新刊『「松之助」オーナー・平野顕子のやってみはったら! 60歳からのサードライフ!』(主婦と生活社刊)も発売中。素敵に年を重ねるために、ぜひ参考にしたいものです。

 

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