最近の注目は、ミニマリストな暮らし
すべての画像を見る(全4枚)たかまつ:ほかに、住まいに関して最近注目されているムーブメントはありますか?
田口:なるべく少ない持ち物で暮らそうという「ミニマリスト」のような発想で、「タイニーハウス(Tiny House)」と呼ばれる10〜15㎡くらいのコンテナハウスに住むのがはやっていますね。
たかまつ:じつは私も、最近ミニマリストになったんです。こんまり(近藤麻理恵)さんのアドバイスにしたがって「ときめかない」ものを整理していくと、やはり環境によくないものは持たなくなりますね。
田口:タイニーハウスも、小さいからといって使い捨ての住宅というわけではなくて、一応は何十年も住めるように、自然素材でつくられているものが多いようです。現行法では住宅とは認められないため、デベロッパーがタイニーハウスを置く土地を確保して、そこに水道や下水も新しく引いた、いわば「タイニーハウス専用の新興住宅地」が各地で登場しているんです。
たかまつ:不動産業界がそこまで攻めた取り組みをするというのは、日本ではあまり想像できないですね。
田口:それだけ消費者のニーズが高いのだと思います。私が住むハノーファー市でも、タイニーハウスに住みたいという声が増えてきたことへ業者が目をつけて、市と交渉して土地を確保したら、募集枠がすぐに埋まったと聞いています。
たかまつ:日本でSDGsに取り組むというと、個人が省エネに励んだり、プラスチックゴミを出さないようにしたりといったレベルにとどまっていて、ドイツのように企業やコミュニティを巻き込んだムーブメントは起きないのが現状です。このギャップを埋めるには、なにが課題だと思われますか?
田口:ドイツにしても、もともと意識の高い人たちの集団というわけではありません。一部で始まった市民運動が拡大して社会一般に浸透し、政治に影響を与えるほどの力を持つようになるまでには、相応の時間がかかっています。つまり、社会を変えるには「時間」が必要だと思うのです。その点、ドイツでは「人が忙しくない」というのが大きなアドバンテージです。学校は基本的には午前中で終わるし、受験もないし、クラブ活動もほとんどありません。大人も残業しないし、フレックス制の会社だと7、8時に仕事を始めて、夕方の4、5時には退社できます。そういう日常の中で、社会活動について考えたり、関わったりする時間を持てたことが大きいのではないでしょうか。
たかまつ:なるほど。日本人の問題は「忙しすぎる」ことなのですね。
田口:そうですね。皆がもっと自分で考える時間を持てるようになれば、社会のあり方も徐々に変わっていくように思います。