共働き全盛の時代とはいえ、気がつけば「自分だけが家事をしているような気がする」「自分がメインで夫はあくまでサポートだけ」と感じる妻たちは少なくありません。「妻だけに家事をさせるのは法律違反でもある」と語るのは、弁護士の森元みのりさん。今回、夫婦間の家事分担に関する法的な解釈について伺いました。

家事をする妻、しない夫
どうも納得いかないことってありますよね?(※写真はイメージです。以下同)
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これって法律違反?知っておきたい「妻六法」

「嫁にもらう」などの表現に象徴されるように、かつて結婚した女性は、「夫の家に属する存在」とのイメージを持たれがちでした。諸外国を見ても、いまだに、「女性は夫の所有物である」「女性は家財道具のようなもの」ととらえる文化も存在します。

しかし、こうした考え方は憲法違反であると指摘するのが、妻が知っておきたい法律をまとめた書籍『妻六法』(扶桑社刊)の共著者でもある弁護士の森元みのりさんです。

 

●家柄や血筋、育ちなどで夫婦間に上下をつけるのはNG

 

「憲法第24条では『婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利』を有するものとして定められています。夫も妻も本質的に平等であり、どちらかが上で、どちらかが下だとは考えられていません

問題になるのは、性別だけではありません。お互いの家柄や血筋、生まれや育ち、財産、キャリア、年齢などにおける属性に違いがあっても、それはひとつの個性にすぎません。

提出関白の夫

「たとえば、夫が資産家の出だからといって、一般的な家に育った妻が言いなりになる必要はありません。夫が、社会的に信用が高い人物であったとしても、肩書を持たない妻が夫婦間で軽んじられることはあってはなりません。どちらかが優れていて、優れているほうの言うことを、劣っているほうが聞かなければならない。そんな考え方は、夫婦の間には存在しないのです」

夫婦とは、常に平等で、お互いを尊重し合う関係性であることを、ぜひ忘れないでください。

 

●妻と夫は等しく家事を担当する義務がある

男女平等が叫ばれて久しい一方で、やはりいまだに男性に比べると「女性は家事と育児をする存在である」とのバイアスは、根強く残り続けています。また、女性自身も、「自分は女なのだから、働いていても家事と育児はやらなければならない」と考えがちです。

ただ、これに対して、弁護士の森元さんは、「妻だけが家事を支え、夫がまったく手伝わない状況は、民法上の義務違反である」と語ります。

民法上は、結婚した男女にはお互いが協力しあい、支えあう『協力扶助義務』があります。逆に言えば、夫婦はお互いの配偶者に自分を支えてもらう権利を持っています。妻が忙しくて家事ができないのであれば、妻は夫に家事を任せる権利があり、逆に夫にはその家事を通じて生活を支える義務があります」