昼間の気づかないうちに漏らしてしまう「おもらし」、夜寝ている間におもらしをする「おねしょ」。多くの子どもは成長につれて身体の機能が整い、5歳前後でどちらもしなくなってきますが、なかにはなかなか卒業できない子どももいます。 では、どうしたら卒業できるのか。おねしょやおもらしをする原因と対処法を、専門医に伺いました。話してくれたのは、おねしょ・おもらし専科の小児科医の羽田敦子さんです。
すべての画像を見る(全4枚)4000人を受診した専門医が伝えたい、おねしょおもらし改善策
『おうちでできる おねしょ、おもらしさよならガイド』(かんき出版刊)を上梓した羽田さんは、おねしょ・おもらしの専門医。これまで4000人の家庭が救われています。
そんな羽田さんは「5歳前後を過ぎておねしょやおもらしをすることは、決して悪いことではありません」と強調。なぜなら、おねしょやおもらしの原因は、身体の機能に潜んでいることもあるからです。なぜおねしょやおもらしをしてしまうのか、羽田さんは、主に3つの原因を挙げています。
●おねしょやおもらしをしてしまう3つの原因
「簡単にいうと、おしっこの量が多い、膀胱に何らかの問題がある、睡眠との関係、この3つです。大前提として、おねしょやおもらしをするかしないかは、『膀胱の容量』と『おしっこの量』のバランスで決まります。大人もそうですが、膀胱におしっこがたまり、『これ以上ためられない』となると、脳は『身体を動かしてトイレに行きなさい』と指令を出します」(羽田さん・以下同)
もしそれが夜の場合、どうなるかというと――。
「ぐっすり眠っているために目を覚ますことができなければ、そのままおねしょをしてしまいます。本来、人間の身体には、寝ている間にトイレに行かずにすむよう、夜間につくられるおしっこの量を少なくする機能があります。おしっこを濃縮することで量を減らす、『抗利尿ホルモン』というホルモンが分泌されているのです。
ところが、なかには様々な事情でこのホルモンがきちんと分泌されず、昼間と同じようにどんどんおしっこがつくられてしまうケースがあります。そうなると、膀胱におしっこをためきれず、何度も起きてトイレに行かなければならないのに、目が覚めない。これが2つ目の原因となる睡眠の問題ですが、トイレに行くべきタイミングで目が覚めない結果、おねしょをしてしまうのです」
また、もともと膀胱のサイズが小さめな人もいます。これが3つ目の原因。
「ためられる量が少ないのでしょっちゅうトイレに行きたくなります。それが夜で目が覚めなかったら、やはりおねしょをしてしまいます。
さらに、本来『おしっこをするぞ』と意識することで出口がゆるむはずの膀胱の筋肉を、うまくコントロールできない子もいます。膀胱の問題ですね。そうなると、そのまま自動的におしっこが押し出され、おねしょをしてしまうのです」
●昼間はおしっこがどんどん生産される
そして、朝起きてからは――。
「昼間は、水分を取った分だけおしっこがどんどん生産されます。このとき、膀胱サイズが小さい人は、頻繁にトイレに行きたくなってしまいます。学校の休み時間中に行くのを忘れたり授業中に先生に言い出せなかったりすると、おもらしをしてしまいます。
一方で、本人にその気はないのに勝手に膀胱が収縮して出口が緩んでしまい、ジワーッとおしっこが漏れてしまうこともあります。病気や事故などで脊髄や神経に問題を抱えると、こうした症状が出ることもありますが、とくに原因がみつからない人もいます」
以上のように、おねしょ、おもらしの原因は主に3つとはいえ、この3つ、あるいは2つの要因が重なって症状が出てしまうケースは少なくないようです。