地震などの災害時、ライフラインが止まって普段どおりの食事ができないということがあります。
そんなとき、身近にあるものでご飯を炊く方法を知っておくと、非常時に役立つことに。じつは、あき缶を使って炊く方法があるのです。
どうやってつくるのか、本当に炊けるのか、味はおいしいのか…。
熊本で開催された防災のイベントに参加し、「あき缶炊飯」を実践体験したライター・松野久美さんに、そのつくり方とコツをレポートしてもらいました。
炊飯器で炊くよりおいしい!?あき缶でつくる直火炊きご飯
先日、熊本県内の会社が主催する「くまもと防災食フェア」へ。
私自身も2年前に熊本地震を経験し、温かい食事が食べられたとき、すり減っていた心が安らぎました。
でも、「できるだけ普段に近い食事を」と言われても、電気やガスが使えない生活では、なかなか難しいのが実情です。
そこで、アウトドア経験がなくても、身の回りのものを使ってご飯を炊くことができるということで、あき缶でご飯を炊く防災ワークショップに参加しました。
かまどと鍋の要領で2つのあき缶を使って炊く方法
あき缶2個を、かまど用と鍋用に使い分け、お米を炊きます。燃料は、牛乳パックなどの紙パックを使います。
作業にはカッターや軍手が必要となります。非常時には、思わぬ作業が必要となるもの。防災袋に、水や保存食と一緒に、こういった道具も入れておくと安心です。
【材料(小さめの茶碗1杯分)】
・350mlのあき缶(中をよく洗って乾かし、上ブタを切り取っておく) 2個
・1Lの牛乳パックなどの紙パック 3個
・無洗米 60g
・お水 90cc
・アルミホイル 15cm四方
・軍手、カッター、着火ライター 各1個
※コンクリートや土の上など、平らで火の気のない場所で行ってください。
※お米とお水の量はイベント用のため、小さめの茶碗1杯分くらいです。
※炊き込み時間は、季節や場所によって変わるので目安にしてください。
【つくり方】
(1)かまど用にするあき缶に、カッターで縦1、2cm、横3、4cmの長方形の穴を上下2か所ずつ、計4個あけます。
まずは下の穴から。底から2cmくらいの位置を切り取って穴をあけたら、180度回転した反対側も同じ位置にあけます。ケガをしないように注意し、一度マジックなどで下書きをしてから切り取るようにしましょう。
上の穴は、下の穴から90度回転したあたりの、縁から3cmくらいの位置にあけます。1つあけたら180度回転した反対側も同様に。
(2)燃料となる紙パックは開いて1面ずつに切り分け、1、2cm幅で切り込みを入れて短冊状に。
(3)もう1つの鍋として使うあき缶に米と水を入れて、アルミホイルでフタをします。ポイントは、中央をくぼませておくことと、縁をしっかりとつまんで密閉しておくこと。沸騰した際に外れてしまうのを防ぎます。
(4)かまど用のあき缶に(2)の燃料用の紙をちぎって3枚ほど入れたら、下の穴から着火ライターで火をつけ、(3)の鍋用あき缶を上にセット。
(5)かまど役のあき缶の上の穴から、5秒に1枚のペースで燃料の紙を1枚ずつ投入。15分ほど中火を保ちます。
(6)途中、上の缶の縁を触ってみると、グツグツしているのがわかります。そのペースが遅くなってきたら最後に燃料の紙を3枚まとめて投入し、強火にして燃料が燃え尽きるまで炊き上げます。
炊き上がったら上の缶を地面に逆さに置いて、2、3分蒸らします。
ふっくらアツアツのご飯のでき上がり!
完成まで約20分。米の甘味も粒感もしっかりあり、正直、わが家の炊飯器よりもおいしい仕上がりでした!!
紙をくべるときに5秒数えたり、紙パックをちぎったり、子どもと一緒に楽しみながら参加している人も多くいました。
アウトドア感覚で体験しながら、防災意識を高められるイベントでした。
熊本城は復旧工事中。復興への道のりはまだまだ続きます
話は変わりますが、現在復旧工事が進む熊本城へも足を運んでみました。
今もお城の中は立ち入りが制限されているものの、周辺は昨年より見学できる範囲が広がって、より間近に見られるように。
天守閣は本格復旧工事に入ったようで、足場や工事用シートで覆われていました。
熊本城を見学する際に最初に見られる場所、元太鼓櫓(もとたいこやぐら)の様子です。見学できる区域が広がって以前よりも240mほど櫓に近づけるように。
まだ地震の爪痕が大きく残っているのがよくわかります。
地元のニュースによると、いまだ3万8000もの人が仮設住宅で暮らしている模様。
ピーク時に比べて1万人は減ったものの、復興への道のりはまだまだこれからだと感じています。
<撮影・取材・文/松野久美>