熊本地震から1年。いつ起きるかわからない地震に備えて非常用品を見直した、と語るのは、熊本市中央区在住の主婦ライター、松野久美さん。水や食料の備蓄は、日常生活で消費しながら備蓄する『ローリングストック法』を取り入れたり、避難グッズを家のわかりやすい場所に置いたりするように。
「防災にまつわる本も読みました。でも、実際にライフラインが止まり、避難生活を余儀なくされた経験があると、本に書いてはなかったけれど『これがたくさんあったら…』と思うものがあるんです」。
日々の暮らしの延長で備えられて、いざ地震のときに活躍する、主婦ならではの目線で必要だと感じた“三種の神器”を紹介します。
日常で使うアレを多めに確保しておくだけで、もしものときに安心!
●多めに備えると安心なもの(1):居住地区指定のゴミ袋
地震直後、意外と困ったのはゴミ袋が足りなくなったこと。テレビ、家具といった市が収集しないゴミ、大型ゴミのほか、食器、トースターや壁かけ時計など、ガラス・せともの類、小型家電製品などゴミ袋を必要とする埋立ゴミが多く出ます。地域にもよりますが、私が住む熊本市では、ゴミは指定の袋でないと出せません。
すべての画像を見る(全7枚)わが家は被害が小さくても思ったよりも指定ゴミ袋を消費しましたし、しばらくは指定ゴミ袋の売り切れが続いていました。別の市に避難していたり、営業している遠くのスーパーにたどり着いても、自分が住んでいる市とは別の指定ゴミ袋だったりして、手に入らないこともあったのです。
震災以降は、熊本市で指定されている燃えるゴミ、埋立ゴミの2種類を常にサイズ違いで20枚ずつストックしています。また、いつゴミ袋の仕様が変わってもいいよう、あまり多くは買いすぎずに、普段必要な量よりも1〜2袋多めに買い、古いものから使うようにしています。
ゴミ袋は、頭と腕が通るようにカットすればカッパになり、小さめのダンボール箱やゴミ箱にかぶせて中に新聞紙を入れれば簡易トイレに、側面の1か所を切って開き体にまとえば防寒対策にもなり、なにかと使えるので、多めにあって損はないと思います。
●多めに備えると安心なもの(2):しっかりめのダンボール
被災時、ダンボールは避難所でのパーテーションのほか、ダンボールベッド、防寒対策など、さまざまなシーンで活躍しました。
また、ゴミ袋と組み合わせて使えば用途がうんと広がります。公園など外で避難する際、平らにしたダンボールの下にゴミ袋を敷いておけば地面が濡れていても水分を吸収しないですし、箱状ダンボールにゴミ袋をセットすれば給水タンク、簡易トイレ代わりにも。
私の義姉は4月16日の本震後、朝まで公園に避難していたのですが、地面が夜露で濡れてきてかなり冷えを感じたそう。防水できるものの上にダンボールを重ねられたら、娘にも寒い思いをさせずにすんだかも、と話していました。
それからというもの、私はダンボールを保管するように。ネットショッピングでたびたび手に入るので、比較的きれいなもの&厚めのものは捨ててしまわず、よりよい状態のダンボールを確保するよう心がけています。普段は棚の脇など目立たない所に収納し、近くにハサミ、マジック、ビニールヒモ、ガムテープ、ゴミ袋といった「地震のときによく使用したもの」グッズも一緒にまとめています。
●多めに備えると安心なもの(3):からのペットボトル
備蓄用のミネラルウォーターももちろん大事だけれど、からのペットボトルがあるともっと安心です。緊急時、水が出るうちにためておけますし、断水して行政から給水を受けるときにも使えます。
実際に私は避難中、ウォータータンクはおろか、からのペットボトルすら持ち合わせていなかったため、せっかくの給水を受けられず苦労しました。それ以来、2Lと500mlの空きペットボトルを備えています。保管場所は、洗面所の下に2Lをふたつ、キッチンの引き出しに500mlを5つ。わが家は夫婦ふたりなのと、家の収納スペースなどを考えてこの本数にしています。
緊急時には、水が出る間にお風呂に水をため、ペットボトルにも入れて水回りに置いておきます。ちなみに1回のトイレ大に使う水の量は約6Lだそう。浴槽を中心に、バケツ、タライなども常備しておき、より多く貯水できると、生活用水にはひとまず困らないはずです。
ただ2Lのペットボトルは出す水の量を調節するのが難しいので、手や食材をちょっと洗いたいときなど少量の水を使うときには500mlが活躍します。
以上、震災の経験から、私が日々心がけていることでした。
話題は変わりますが、つい先日、思い立って熊本城まで足を運んでみることに。今も立ち入りが制限されているものの、桜が見頃の時期には行幸坂(みゆきざか)が期間限定解放され、地元の人や観光客が多く訪れていました。
復旧中の天守閣、崩れたままの石垣の姿は痛々しいですが、桜が見事に咲き誇っているのを見ると、復興を力強く後押ししてくれているようにも感じます。