「BBA」――これは、ババアならぬ「貧乏ばあさん」のこと。名づけ親は、NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」の理事長を務めながら評論家として講演や書籍の執筆にいそしむ樋口恵子さん(89歳)です。

樋口さんは、「今の40~50代女性の多くは、貧乏ばあさんの予備軍」と懸念します。なぜでしょうか。また、予備軍が“本チャン”にならないようにするにはどうしたらいいのでしょうか。今からできることもあわせて、お話を伺いました。

樋口恵子さん
樋口恵子さん

人生の大先輩・樋口恵子さんが語る「これからの老後の備え」

冒頭のような事態を免れるために私たちができることは? 大きくわけて2つの重要なことを樋口恵子さんに教えてもらいました。

●年金の積み立て開始は、40代50代がラストチャンス

今は大黒柱の夫がいても、やがて死別や離別などで1人になる可能性は誰しもあります。その時家を支える柱が細くて頼りないか、太くてしっかりしているか。それは、今の働き方にかかっているといいます。

「今の40~50代で働いている女性は大勢いらっしゃいます。ただ、それで安心といえば、それは働き方によります。もし今の収入が不安定で先が不安ならば、

今からでも正社員になって厚生年金保険に入ることをおすすめします

。老後の一人生活を“リッチ”にするのは、収入と蓄え。この2つを同時にまかなうのが、正社員なのです。

女性の場合、特に30代後半から50歳程度までの就職氷河期世代(=ロスジェネ世代)は、非正規のまま仕事をしている方が非常に多い。運よく新卒で正規社員として入っても、子育てや親の介護、夫の転勤などで、退職し、再就職した先が、非正規というケースも。

公益財団法人横浜市男女共同参画推進協会が2020年に行った調査によれば、首都圏在住の34~49歳の働く単身女性計300人のうち、非正規は141人。年収はほぼ2人に1人が200万円未満で、貯蓄は10万円未満が最も多いという結果でした。

この調査からも分かるように、非正規の方の多くは低年収で貯蓄もままならないうえ、不安定な雇用状況です。さらには、老後に受け取れる年金額が少ないことも問題です」

例えば、2021年度の国民年金(老齢基礎年金)の月額は、満額でも6万5075円。一方厚生年金の場合、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は、22万496円(※)。独り身の女性で、かつ非正規の人は、“貧乏ばあさん”への現実味が一気に増してきます。
※平均的な収入(賞与を含む月額換算)=43.9万円で40年間就業した場合に、受け取り始める年金額

年金手帳
まずは年金についてシミュレーションを(※写真はイメージです)

「まずは、このままいけば自分がもらえる年金はいくらか、シミュレーションから始めてみては。厚生年金に加入してきた夫がいるなら、夫の死後、遺族年金をもらえる可能性もありますが、それも“離婚しなければ”という前提のもと。なお、離婚しても夫の年金が分割される制度はあります」

その点、正規職員になれば、手取りは少ないにしても、収入が安定する上、老後に入る公的年金も手厚くなります。

「パートなどの非正規労働者でも、労働時間が週30時間以上など条件を満たせば、社会保険に入れるようになっていますし、その間口は広がりつつあります。また、今は就職氷河世代を就職支援しようという動きも出てきています。ご自分が損をなさらないように、年金問題、就労問題については社会の動きをよく見て、チャンスがあれば、例えば時給が下がっても正社員の立場を獲得してほしいと思います」

40~50代は、徐々に子どもの手も離れて、動きやすくなる年代。将来が不安な方は、今こそ正社員になって老後の保険をつくる最後のチャンスなのだと、樋口さんは強調します。