子どもたちが成長する「10年間」は、家族が密に過ごす時間。そう考えた一家がつくり上げた新築戸建を紹介します。コンセプトは楽しい思い出を育む家。食堂みたいなキッチン、アスレチックコーナー、アウトドアの雰囲気いっぱいの2階テラス…。親子のコミュニケーションが活発になる仕掛けがいっぱいです。家事と子育て、仕事もストレスなくこなせる住まいになりました。上の写真は、キッチンからの眺め。正面に畳敷きの寝室と、その上部に子どもたちのためのスタディスペースを配しました。スタディスペースの南向き窓から光が差し込み、LDK全体が明るさと広がりを得ています。

畳敷きの寝室と、その上部にスタディスペースを配置
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目次:

キッチンと子どもスペースを吹き抜けでつなげた3階建て子どもを見守り、声がけできる家族で囲む“街食堂”キッチン家族の様子がいつも分かる司令塔のようなキッチン時間を気にせず使える玄関すぐのオープン書斎とウォークインクローゼット子どもたちの好奇心を高める立体的なアスレチックプランテラスやフロントヤードで家を外に開放してボーダーレスに間取り図

キッチンと子どもスペースを吹き抜けでつなげた3階建て

Oさんの家 東京都 家族構成/夫40代、30代、長男10歳、長女8歳、次男6歳
設計/伊達宏晶(エキップ)

この家のこだわりポイント

  1. 子どもが手伝いやすいカウンターキッチン
  2. 親子の会話がはかどるレイアウト
  3. ストレスフリーなコンパクト家事動線
  4. 仕事と趣味の両方に没頭できる書斎
  5. 玄関からダイレクトにつながるウォークインクローゼット

子どもを見守り、声がけできる家族で囲む“街食堂”キッチン

リビングから見たキッチン

リビングからの眺め。「街の食堂のようなキッチンにしたい」という希望をかなえた、カウンターキッチン。親子で料理をするスペースでありつつ、家族みんなで囲む食卓も兼ねています。

右手に見える黒いのぼり棒とボルダリング壁は子ども部屋につながっている

キッチンからリビング方向への眺め。右手に見える黒いのぼり棒とボルダリング壁は子ども部屋につながり、上下の移動を毎日楽しめるアスレチック遊具です。

コンパクトながら片づけやすいキッチン

キッチンはコンパクトながら、システムキッチン収納と造作の収納で、片づけやすさに配慮しました。木製サッシの窓は屋外テラスとつながります。

洗濯機を収納する小部屋

LDKの一角に、洗濯機を収納する小部屋を設置。料理をしながら洗濯機を回し、上部スタディスペース脇のバルコニーに干す、という家事動線の簡略化を図りました。

家族の様子がいつも分かる司令塔のようなキッチン

「家族が密に接する10年間をみんなで楽しみ、そして子どもたちが各自の家庭を持ったとき、自分が生まれ育った環境を愛おしく感じられる環境にしたかった」とOさん。毎日笑顔で暮らせて、ストレスが少ない家を求めました。

そのメインとなったのがキッチン。「キッチンから子どもたちとコミュニケーションを取りたい」と希望して、2階にワンルームのLDKをつくり、オープンキッチンを設置。その正面に子どもたちのスタディスペースを設けて、料理をしながら会話ができるようにしました。

造作のカウンターで囲ったキッチンはダイニングテーブルとしても使用。コンパクトなスペースですが、かえって動きが少なくてすみ、調理、盛りつけ、配膳などの動線がスムーズです。

また、リビングの一角に洗濯機を設置するスペースを完備。「普通、洗濯機は洗面室などの水回りに置くと思いますが、わが家の洗面室は1階。毎日の家事を考えると、キッチン近くに設置するのが便利だと思いました」と妻。

1階には、夫が使う書斎を設置。仕事柄、早朝出勤、深夜帰宅が多々あることから、家族に迷惑を掛けないように配慮したプランです。その奥には夫妻で共有する大きなクロゼットを設け、出かける際の身支度や帰宅後の着替えがここで完結するようにしました。

家時間が多くなった今、楽しい要素と家事ラクを盛り込んだO邸には、お手本にしたいヒントが詰まっています。

時間を気にせず使える玄関すぐのオープン書斎とウォークインクローゼット

玄関土間の脇に設けた夫の書斎

1階の玄関土間の脇に設けた夫の書斎。個室にはせずオープンにして、昼間は上階の家族との声かけがしやすいようにしています。

夫妻が共用する大きなウォークインクロゼット

玄関を入っていちばん奥まった場所に、夫妻が共用する大きなウォークインクローゼットをつくりました。日々の洋服をはじめ、コートなどのかさばる季節ものまで一手に収納し、上階の居住スペースをすっきり保てるようにしています。

書斎、水回り、ウォークインクロゼットは1階に集約

玄関土間からの眺め。書斎、水回り、ウォークインクロゼットは1階に集約しました。

階段下のデッドスペースを生かしてシューズクロゼットを配置

玄関土間に、階段下のデッドスペースを生かしてシューズクローゼットを配置。

人工芝を敷いた書斎にテレビを設置

人工芝を敷いた書斎にテレビを設置。「テレビを見たりして、くつろげる玄関にしたかったんです」という夫の希望をかなえました。長男が上階で勉強に集中しているときは、下の2人の子どもたちは邪魔をしないようにと、ここでテレビを見たりゲームをして過ごしています。

子どもたちの好奇心を高める立体的なアスレチックプラン

収納を兼ねる小上がりを設置

子ども部屋の一角に、収納を兼ねる小上がりを設置。隠れ家のようなこぢんまりしたスペースで、来客時にはゲストルームとしても使います。

のぼり棒とボルダリング壁で子どもたちの運動不足を解消

2階LDKと3階の子ども部屋を行き来できる、のぼり棒とボルダリング壁を設けました。「家にいる時間が長くなったときに、子どもたちの運動不足やストレス解消に役立つアスレチックアイテムになっています」と夫。

アスレチックアイテムを使って上下階を移動

上下階の移動に楽しさを盛り込むことで、家時間を充実させています。

子どもたちのスペース

3階すべてを占める子どもたちのスペース。壁の一部にホワイトボードのようなボンデ鋼板を用いて、落書きができるようにしています。

子ども部屋は個室

子どもたちそれぞれの個室スペースを完備しました。3室ともに、ベッドと収納をつくりつけただけのシンプルなプランですが、長男は青色、長女は紫色、次男は黄色と、各自が好きな色をアクセントカラーに配しました。

スタディスペース

スタディスペースは、2階LDKと3階子ども部屋との中間に位置します。子どもたちの個室スペースへは、デスクからよじ登ってのアクセスも可能。

テラスやフロントヤードで家を外に開放してボーダーレスに

窓を介してキッチンとつながる2階テラス

2階テラスは、窓を介してキッチンとつながります。キッチンから食材などの手渡しが簡単で、アウトドア気分を満喫する「外食堂」として、Oさん家族は頻繁に活用。ときには、テラスにテントを張ってキャンプ気分も味わっています。

のぼりロープで遊ぶ子どもたち

フロントヤードにのぼりロープを設置し、子どもたちの安全な遊び場にしています。「ご近所のおじいちゃん、おばあちゃんが声をかけてくれたりして、周囲の方々とのコミュニケーションの場にもなっています」と夫。

2階テラスやフロントヤードによりボーダレスも住まいと外部をつなぐ

「外食堂」として楽しむ2階テラスや「フロントヤード」によって、住まいと外部をボーダーレスにつなぐO邸。

間取り図

O邸の間取り図

DATA

敷地面積/86.73㎡(26.28坪)
延床面積/136.44㎡(41.35坪)
1階/50.73㎡(15.37坪)
2階/44.16㎡(13.38坪)
中3階/9.37㎡(2.84坪)
3階/32.18㎡(9.75坪)
用途地域/第1種住居地域
建ぺい率/60%
容積率/160%
構造/木造軸組工法
竣工/2019年3月
本体工事費/3600万円

素材

[外部仕上げ]
屋根/ガルバリウム鋼板縦ハゼ葺き
外壁/モルタル、ガルバリウム鋼板縦ハゼ葺き
[内部仕上げ]
1階 床/モルタル、タモ、塩ビタイル、塩ビシート
壁/クロス、塗装、ラワンベニヤ
天井/クロス、塗装
2階 床/タモ、塩ビタイル、新畳、樹脂製ウッドデッキ(外食堂)
壁/塗装、タイル
天井/塗装
中3階 床/バーチ
壁/塗装、シナベニヤ
天井/塗装
3階 床/バーチ、新畳、塩ビタイル
壁/塗装、シナベニヤ、ホーローパネル
天井/塗装

設備

厨房機器/LIXIL
衛生機器/パナソニック、オリジナル
窓・サッシ/LIXIL、タミヤ

施工/オダ建設
設計/伊達宏晶(エキップ)

撮影/水谷綾子 ※情報は「住まいの設計2021年8月号」取材時のものです