●適応障害と診断されされたら、どんな治療が有効?

パソコンの前に女性
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メンタルの不調では心療内科やメンタルクリニックを受診します。病院では、気分の落ち込みや不安(抑うつ状態)が強ければ抗うつ剤や抗不安剤を、不眠があれば睡眠導入剤が処方されます。睡眠がしっかりとれるだけで回復する方も。

薬の処方だけでなくカウンセリングによる治療もあり、「認知行動療法」が行われることもあります。

ストレスを感じるとネガティブな思考になりがちですが、認知行動療法では自分の考え方の癖を知り、状況に応じてストレスに対応できるバランスのよい心の状態をつくっていくことで治療にも再発予防にもなります。

適応障害だと診断がつくことで「甘えや怠けではなかったんだ」とホッとすることもできるでしょうし、安心して休職したり傷病手当など制度を活用することもできますから、つらい状態が続いたら心療内科やメンタルクリニックを受診するとよいでしょう。

治療中は朝起きて日光を浴びる、適度な運動をするなど生活のリズムを整えましょう。再発を防ぐためにも、家族や職場の人に悩みを話すことも大切です。一人で抱え込まずにだれかに助けを求められるようにしましょう。

●大切なのはストレスになっている原因を取り除くこと、変えること

適応障害はストレスの原因がなくなればよくなりますから、病院で症状をやわらげた上で根本的なストレスに対処していきます。
産業医の立場としては、職場に原因があるときにはパワハラや長時間労働などが背景にあることも考えられるので、ぜひ上司や人事総務、産業医に相談してほしいと思います。
産業医は時間外労働や出張の禁止、時短勤務など労働時間の負荷を減らすこと、部署異動などの業務配置転換を事業所に提案できるので、相談することで状況に対処することもできるでしょう。

また、適応障害を起こすということは、その業種や仕事が自分に合っていない可能性もあります。資格を取ったり、転職活動をして新しい仕事に就いて、体調もよくなり今まで以上に活躍するようになった患者さんもおられます。キャリアチェンジのきっかけと考えてみてください。

ストレスの原因からどうしても離れられない、取り除けないときには、前述した認知行動療法が助けになることも。
ある患者さんは休職中に自分の考え方(認知)の癖や行動パターンを考えてストレスに対応できるようになり、復職後は自分だけでなく周りの人への接し方も変わって、頼れる存在として活躍されています。

●身近な人が適応障害になったら原因追求はNG

家族や友人、職場の仲間が適応障害と診断された、適応障害かもしれないと思ったら心配ですし、なにか力になりたいですね。

「なにがイヤなの?」と原因を追求したり、「以前のあなたになろうよ」「がんばろう」と励ますのはよくありません。

原因を探したり指摘することは、適応障害になっている人にはつらいことを思い出させてしまいます。そして、そのことから逃げずになんとかしようとしているからこそ体や心が悲鳴を上げているので、それ以上焦らせたり、がんばらせてはいけません。

つらさや悲しさを「そうだね」と受け止め、その人が安心できるようにすることが大切です。

しかし親身になりすぎるとこちらも気持ちが巻き込まれてしまうこともあるので、ほどほどの距離を保つことも大切です。

●進学や進級時には子どもの適応障害にも注意

机に子ども

不登校のお子さんの中には、適応障害が原因になっていることもかなりの割合でみられます。

なにがつらくて負担になっているのか、お子さん自身も原因がよくわからない場合があり、話をしても親や先生が理解できずに困ってしまうケースも。

進学や進級、学期の変わり目などでお子さんの様子が変だなと思ったら、メンタルクリニックなどの受診を検討してください。

●適応障害セルフチェックシート

1~3か月以内に大きな変化や出来事があり、以下の項目のような不調があれば適応障害の可能性があります。

【適応障害のセルフチェック】

□今まで楽しんできたことが楽しめなくなった
□食欲がない、もしくはありすぎる
□眠れない、もしくは寝すぎてしまう
□気分が落ち込んでしまう、もしくはイライラしてしまう
□お酒やタバコが増えた
□パチンコやゲームがやめられない、時間が増えた

【周りの人から見た適応障害チェック】

□遅刻や欠勤が増えた
□ミスが増えた、集中力がない
□今までできていたことができなくなったり、ひどく時間がかかる
□口数が減ってきた
□挨拶をしなくなった
□身なりや服装を気にしなくなった

まず思い当たる原因を変えられないか、あるいは離れられないかを考えてみましょう。
同時に十分な睡眠をとること、スマホやテレビなど情報源は脳を疲れさせるので遠ざけ、「なにもしない」で心身を休めることが大切です。

それでもつらい症状が続き、生活するのが苦しいようであれば適応障害やほかの病気の可能性もありますから、メンタルクリニックや心療内科の受診をおすすめします。