寒さが増して、外に出るのがついおっくうになり、ついつい運動不足に…。そんな人に試してほしいのが、「メディカルヨガ」です。東京都中央区にある総合病院・聖路加国際病院で、手術を受けた患者さんのリハビリとして行われている「メディカルヨガ」の講座が、「無理なく体力がつき、元気になる」と大好評なんです。

メディカルヨガで体力がアップ!ストレスも軽減

「メディカルヨガ」を考案したのは、聖路加国際病院の看護師で、メディカルヨガインストラクターの鈴木陽子さん。
「メディカルヨガは、医学的な観点から見たヨガのメリットを、心身の健康のために取り入れたメソッド。普段あまり動かさない筋肉を動かすことで、柔軟性やバランス能力が向上し、体力がアップします。また、ゆったりとした呼吸を意識して行うので、自律神経が整い、ストレスが軽減。体に意識が向かい、体調管理もうまくなるといった効果もあります」。

メディカルヨガを始める前に…2つのルール

(1)呼吸を意識する

忙しい現代人は、呼吸が浅くなりがち。メディカルヨガでは深い呼吸を意識することで効果がアップし、自律神経のバランスが整います。ポーズを行うときは、腹式呼吸を意識し、息を吸ったときにおなかが膨らみ、吐いたときにへこむように深く呼吸するのがポイントです。また、呼吸は鼻呼吸でゆっくり行い、たくさん吸おうとするより、しっかり吐ききることに意識を向けて。

(2)基本の姿勢

メディカルヨガのポーズを始めるときは、次の2つの基本の姿勢からスタート。最初に姿勢をしっかり安定させてから行いましょう。

●安楽座(あんらくざ)

安楽座
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座ったポーズを始めるときの基本姿勢。左右のお尻の骨である坐骨を床につけて両脚を開き、肩の力を抜いて背筋を伸ばします。肩はリラックスさせ、首をすっと伸ばし、腰を反らすぎないのもポイントです。

●立位

立位

立ったポーズを始めるときの基本姿勢。上半身は安楽座の状態で、両足は腰幅に開いて足先を前に向けます。ももを少しだけ内側にねじるイメージで下半身を安定させ、背筋を真っすぐ伸ばしましょう。耳、肩、胸の中心、ひざ、くるぶしが、床から垂直に一直線にそろうようにするのもポイントです。

メディカルヨガに挑戦!!朝昼夜に行うのが大事です!

無理なく、効率的に全身にアプローチできる3つのポーズを朝昼夜の時間帯に分けて行います。それぞれの時間帯に分けて行うと、生活のリズムをサポートして一日が快適に。
朝は心身を目覚めさせ、昼は活動をサポートし、夜は良質な眠りに導く役割があります。腹式呼吸をしっかり意識しましょう。

●朝のヨガ

背骨を左右に大きく動かして、背骨や肋骨周りの筋肉をほぐすポーズ。肺を動かす肋間筋(ろっかんきん)をストレッチすることで、呼吸が深くなって酸素をたっぷり取り入れられるようになり、眠っていた朝の脳がすっきり目覚めます。

(1)息を吸いながら

息を吸いながら

安楽座の姿勢から右のつま先を前に向け、左足を伸ばして斜め45度ぐらいに開く。体は正面を向けたまま、息を吸いながら右手を上に伸ばす。

(2)息を吐きながら

息を吐きながら

左手で軽く床を支え、息を吐きながら体を左に倒す。脇腹、肋骨、脇の下が気持ちよく伸びを感じるところまで倒し、3呼吸程度キープ。目線は斜め上に。

(3)息を吐きながら

息を吐きながら

息を吐きながら、左足に向かっておへそから体を倒す。胸の中心に左足がくるようにし、そのまま3呼吸程度キープ。反対側も同様に行う。

●昼のヨガ

下半身を安定させ、体力をつけるために基本となるお尻とももを強化。背骨周りの筋肉も同時に鍛えるため、体に負担のない正しい姿勢を保てるようになります。

(1)基本の呼吸をしながら

基本の呼吸

立位から、イスに腰を下ろすようなイメージで両ひざを曲げる。その際ひざがつま先より前に出ないように注意する。背筋を伸ばし、目線は正面に向けたまま軽く両手を合わせ、そのまま3~5呼吸キープ。1~3回行う。

●夜のヨガ

日中の緊張でこわばった背骨周りの筋肉を、重力を使いながらほぐし、背骨をニュートラルな状態に。自律神経を整え、眠りに入りやすい休息モードへと導きます。腰だけでなく、胸、首まで背骨全体をひねるように。

(1)基本の呼吸をしながら

基本の呼吸をしながら

あお向けになり、左ひざを両手で抱えて胸に寄せる。

(2)息を吐きながら

息を吐きながら

左手を肩から真っすぐ伸ばして手のひらで床を支え、左ひざをゆっくり右側に倒す。左のつま先を床につけ、過度にひねらないようコントロール。目線は左に向け、そのまま3~5呼吸キープ。反対側も同様に(1)(2)を行う。

(3)基本の呼吸をしながら

基本の呼吸をしながら

両ひざを抱えて体を左右にゆすり、背中を休める。

以上、メディカルヨガの代表的な3ポーズをご紹介しました。効果的なポーズの種類はまだまだたくさんあって、

『ESSE12月号 聖路加国司病院のナースに教わるメディカルヨガ』

にも掲載されています。こちらもぜひチェックを。
「30~40代の働き盛り世代は、忙しさから運動不足になり、体力が低下している傾向にあります。普段は疲れていてなかなか運動できないという人こそ、メディカルヨガの習慣を少しだけ日常に取り入れることで、心と体が自然に整いますよ」(鈴木さん)。

※妊娠中やその可能性がある方、持病のある方は事前に医師と相談してください。また試してみて痛みや不調があるときは、すぐに中断してください