子どもが生まれるタイミングで新居の建築に踏み切ったSさん。都市部の賃貸住宅に住んでいましたが、自然豊かな環境を求めて郊外で土地を購入。設計は自然や光をうまく取り込んだ設計が得意なスタジオCY・堀内雪さんに依頼することに。堀内さんから提案された平屋プランを見てSさんは ”これだ!” と心打たれたそうです。それは中庭をコの字に囲み、すべての空間から緑や土を身近に楽しめるプランの平屋でした。
すべての画像を見る(全13枚)どこにいても家族を感じる間取りに
光を取り入れながら、外との一体感を楽しめるLDK。中庭や右奥の子ども部屋とがひとつながりになっているうえ、高い天井がさらなる開放感を演出しています。もともとは2階建てを希望していたSさん夫妻。
そのプランよりも全体の床面積は狭くなったものの、結果的には十分な広さが確保できました。
今はオープンになっている子ども部屋には、いずれ仕切りを付けて個室にし、さらに上部にロフトベッドを設ける予定です。
子ども部屋の隣はシンプルなオリジナルキッチン。壁側には、分別用ごみ箱もまるごと入る大容量のカウンター収納を造り付けながら、見せる収納のための棚も設置しました。
キッチンの上部には小屋裏スペースがあり、収納として無駄なく活用。スーツケースなど日常的に使わないものを置くスペースとなっています。
キッチンに立つと、庭も含めLDK全体を見渡すことができ、遊び盛りの子どもから目が離せない妻は、とても助かっているのだそうです。キッチンから庭越しに朝日が昇る景色も、妻のお気に入りだとか。
リビングからつながっているかのような緑豊かな中庭
食事にも遊びにも重宝するウッドデッキは、夫と夫の父親によるDIY。外壁の赤、植栽の緑、窓枠の白は、以前住んでいたメキシコの国旗カラーでもあり、Sさん夫婦にとっては思い出深いカラーリングです。
中庭をコの字型に囲むつくりにしたことで、外部からの視線も遮ることができ、日中はカーテンを開けて過ごせるのだそう。
外壁には存在感のあるレンガ色をしたガルバリウム鋼板を採用。植物のしなやかさと美しく調和しています。ガルバリウム鋼板には波状の凹凸があり、陰影のついた変化のある外観に仕上がりました。
採光のため、玄関ドアには大きな透明ガラスが入ったものを採用していますが、LDKは玄関を入って左側にあるため、ガラス扉でも中の様子が分からず、プライバシーをしっかり確保できています。
玄関からそのままリビングまで伸びる土間スペース。土足でリビング空間に立つことで、内外のつながり、外との連続性も楽しめるのだそう。
サニタリーから寝室までは仕切りなし
トイレ、洗濯・洗面スペース、さらに寝室への通路には仕切りを設けていません。いずれは仕切る予定ですが、このオープンな空間が子供のトイレトレーニングなどにも役立っています。
浴室にはメンテナンスがしやすいサイズの置きバスと、最小限の棚をしつらえました。本当に必要なものだけを取り入れ、シンプルで飽きのこないデザインに仕上げています。
サニタリーを抜けた先、離れのような空間には寝室を配置。賑やかなLDKとは中庭を挟んで離れているため、静かで落ち着きを感じられます。
道路側の窓は高い位置に設け、光や風は取り入れながら、外からは見えないように工夫を施しました。平屋での子育てのしやすさを実感しながら、S邸では今日も子どもたちと愛犬が元気に、自由に走り回っています。
設計 スタジオCY・堀内 雪
撮影 桑田瑞穂
※情報は「住まいの設計2018年1-2月号」掲載時のものです。