栃木・宇都宮市で社会人の子ども2人と暮らすHさんは、長年暮らした家の建て替えを決意しました。南側に隣地の建物が迫り、東から北に抜ける道路は散歩者も多いため、以前は2階にLDKを設けていたそうです。しかし今回の建て替えでは、1階をLDKに。「より緑や土が身近に感じられる暮らしを望みました」とHさん。

中庭のある癒しの家
すべての画像を見る(全12枚)

目次:

暮らしのなかに自然の恵み取り込みたいなら断然!コートハウス空間のレイアウトで暮らしやすさをサポート2階には中庭を見下ろす贅沢なインナーテラスが!

暮らしのなかに自然の恵み取り込みたいなら断然!コートハウス

中庭のある癒しの家

1階でも十分に光と風を得てのびのびと暮らせるよう、設計した遊空間設計室・高野保光さんは外壁を閉じ気味にして中庭を設置しました。そして、中庭を囲むように建物をコの字型に配置することで、光と風、プライバシーを獲得。
さらに自然豊かな植栽で、暮らしに四季折々の楽しみを与えました。植栽は人気の造園家・荻野寿也さんによるものです。

中庭のある癒しの家

荻野さんは中庭に自然の造形を再現し、外構に周囲と一体感ある植栽を施して原風景を思わせる仕上げとしました。Hさんも植栽の普段のメンテナンスは雑草を抜くくらいで、落ち葉も樹木のあるがままの姿として、掃除しすぎず地面に散らしているそうです。
東側は壁を南方向に伸ばし、その内側に中庭をつくっています。北側の道路側には、家族3人分の駐車スペースを確保しています。

中庭のある癒しの家

アプローチの敷石には、耐久性に優れた栃木産の芦野石が使われました。玄関ドアを開けると視線が中庭に抜け、来客にサプライズを与えます。

中庭のある癒しの家

玄関土間から見えるのは、こんな中庭の風景です。

空間のレイアウトで暮らしやすさをサポート

中庭のある癒しの家

Hさんが1階をおもな生活空間としたのは、先々キッチンへの荷物運びなどの負担を軽くする目的もあったそう。より移動しやすいよう、玄関・リビング・DKは、中庭に沿いながらつながるレイアウトになっています。
なかでも、大きめのテーブルを配したダイニングは、リビング、和室ともつながる中心的な存在です。

中庭のある癒しの家

リビングは通常の1.3倍ほどの天井高があり、北側の高所窓からは、ケヤキの街路樹が借景のようにとらえられます。壁の裏側から上る階段は、踊り場からリビング脇を通り、階下と視線をつなぐ役割も果たしています。
また、リビングから数段下がった位置には、自宅で仕事をするHさん用の小空間を設置しました。これは、来客時の対応をスムーズにするための配慮です。

中庭のある癒しの家

中庭を介し3方向の部屋は向き合い、内部ではひとつながりになっているため、コミュニケーションが取りやすいという利点もあります。和室からは手水(ちょうず)鉢が目に入り、対面には玄関近くのリビングが見えます。

中庭のある癒しの家

ダイニングの中庭側には、くつろげる濡れ縁があります。和室の地窓は、通風の役割も果たしています。

中庭のある癒しの家

茶室風の和室は、中庭に加え、低い位置から外庭も楽しめます。

2階には中庭を見下ろす贅沢なインナーテラスが!

2階はプライベートルームと水回りで構成されています。

中庭のある癒しの家

さらに高野さんは、開放感をたっぷりと味わいながらくつろげるようにと、床に深岩石を敷き詰めた広いインナーテラスを設計しました。テラスは中庭を上階から囲み、太陽のまぶしさや雨、外からの視線なども気にすることなく空や緑が楽しめる、贅沢な空間となっています。

中庭のある癒しの家

2階に2つある寝室は共にテラスと接していて、リラックスできるつくりです。庭には、アオハダ、ヤマボウシなどの高木、低木、下草がバランスよく植えられています。
「毎朝、ダイニングの窓のロールスクリーンをさっと開け、四季折々の風景を見るのが何よりの楽しみです」とHさん。

宇都宮市には、緑化率や植栽の種類などに関する緑地協定があるそう。そうした約束ごとを守りながら完成した、かぎりなく自然体の暮らしを楽しんでいるようです。

設計/遊空間設計室
撮影/桑田瑞穂
※情報は「住まいの設計2018年1-2月号」取材当時のものです