●思い出話をしてもらうことが救いであり、癒しになった

セカンドバッグや財布、タバコなど
夫がいつも持っていたセカンドバッグや財布、タバコなどの思い出の品たち
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大切な人を亡くした人にかける言葉はとても難しいと思いますが、私の場合は「夫の話」をしてもらうことが大きな救いになりました。

葬儀はコロナ禍で執り行われたため、通夜ぶるまいの場では聞けません。その代わりに、いろいろな人がメールやメッセージなどで夫の思い出話を教えてくれました。

「ゴルフに何度も誘ってもらいました」
「今度釣りに行こうって話をしてたんですよ」
そんなプライベートの交友話だったり、外では私のことも話していたようで
「奥さんがライターをしていて、温泉に詳しいんだって言ってましたよ」
「奥さんと旅行に行ったときの話をいつも聞かせてくれました」
なんて、泣きそうになる話も。

もっと聞きたい、もっと、もっと…と思いながら、エピソードをひとつ教えてもらうたびに、そのときの夫の顏や声を想像し、何度も心の中で偲ぶことができました。

お悔みや慰めばかりだと、どうしても悲しみ一色になってしまいます。元気だった頃の楽しい思い出を共有し、みんなの心の中で夫が生きていると実感することも私には必要で、確かな癒しになりました。

<一方通行の手紙がかえってよい場合も>

アナログな方法で心に残ったのが、遠方で葬儀に来られなかった人や、急逝をあとから知った人にいただく手紙です。

葬儀後にいただいた手紙
葬儀後にいただいた手紙

お香典やお線香、お花といっしょに、哀悼の言葉や夫との思い出、感謝の気持ちが切々とつづられていて、しみじみとした気持ちに包まれました。

手紙は保存ができますし、お礼を伝える方法やタイミングも自分で選べます。SNSは失礼ではないか、かえって返信を気にするのではないか、といった理由で言葉をかけるのをためらったら、受け取る側の負担の少ない手紙で気持ちを伝えるのもいいかもしれません。

ちなみにパソコンの印字か直筆かは、私は気になりませんでした。直筆の手紙は多かったですが、どのような形でも心に届きました。

●食事の差し入れで気力が戻った

お菓子など
買い物すら行く気力がないなか、助けられた差し入れ

心を支えてもらったのが言葉なら、体を支えてくれたのが「食料」の差し入れでした。

葬儀を終えたあと、待ち受けていたのは恐ろしいほどの虚無感。とにかく気力というものが皆無で、買い物をする気も起きず、食欲も湧かない。

口にできるのは、ゼリー食などの栄養補助食品ばかり。正直、倒れないように生きているのがやっとという状況のなか、「おせっかいかもしれないけど」と言いながら、おかずを届けてくれる人やレトルトを宅配で送ってくれる人がどれほどありがたかったことか。

スープやシチューなどの温かい食べ物を口にすると、ほっと心が休まりました。届けてもらった食料は、まさに非常時のライフライン。少しずつ食べるうちにだんだんと気力が戻り、生活を立て直すことができました。

配偶者の死別は、人生に振りかかるストレスで最大級だといわれています。その悲嘆の寄り添い方を、私は多くの人に教えてもらいました。この感謝は、いつかだれかが同じ立場にたったときに、そっと返していけたらと感じています。

【佐藤由香さん】

生活情報ライター。1968年埼玉県生まれ。編集プロダクションを経て、2011年に女性だけの編集ユニット「シェルト・ゴ」を立ち上げる。料理、片づけ、節約、家事など暮らしまわりに関する情報を中心に、雑誌や書籍で執筆。