葬儀後、少し落ち着いたところで、私も夫を見習ってスマホの連絡帳を修正しました。なにかあったときに連絡する可能性がある人、会社だけなど関係性を入れ、パスワードも今後の私の身元引受人となる実姉には教えておくつもりで、ノートにまとめ始めています。
●夫の貴重品入れを初めてあける
訃報の連絡を終えても、泣いてる暇はありません。
10年目の単身赴任生活に入っていた夫のものは東京にはなく、貴重品から思い出のものから、全部赴任先の家に置いていたので、直近で必要なものを持って帰らなくてはいけません。(私は東京でライターの仕事を続けながら、月に一度夫の住む街に通うという二重生活を送っていました)
「まずは貴重品だ。あのクローゼットに入れてたバッグ!」
すべての画像を見る(全2枚)何度めかの転勤で、引っ越し荷物をまとめているときに見つけたセカンドバッグ。
「これなに? 使ってないなら捨てれば?」と私が言うと
「それはオレの大事なものが入ってるんだから触らないで」
と、夫が言っていたバッグ。私がしまったので置き場所はすぐにわかりました。
あけてみると、通帳、印鑑、年金手帳、パスポートなど、まさに貴重品がまとめて入ってました。すばらしい…。さすがだね、夫。あなたはじつに几帳面な人だったね…。
あとになってよかったと思ったのは、マイナンバーの通知カードが入っていたことです。普通、貴重品というと預貯金関係のみまとめることが多いのですが、死後の手続きではマイナンバーが頻繁に必要になります。
保険会社の人にも「マイナンバーがすぐわかるのは珍しいですよ」といわれたほど、マイナンバーが見つからないというケースは大変多いそう。
●死後に備える貴重品のまとめ方
今回のことで、死後に備える貴重品のまとめ方がわかりました。
・銀行、証券、保険など金融関係のもの。通帳や証券などがないネット系や電子マネーは、会社名や口座番号、保険の種類など明記したメモ
・不動産、財産的価値のある動産(宝石・美術品などのメモや鑑定書)、会員権など
・マイナンバーカード、年金手帳
ずいぶん多種多彩ですが、これらがまとまっていると遺族はとても助かると思います。
大事なことは、どうやってまとめるかより「どこにあるか」です。どんなにきれいにわかりやすく整理しても、それがどこにあるかわからなければなににもなりません。
夫の場合も、セカンドバッグにざっくりと入れてあるだけでしたし、株や保険に関してはファイルボックスにどさっと入れてあっただけでした。それでも「このあたりにありそう」という見当がつけば、探しやすくなります。とくに個人で財産管理している家庭は、貴重品の場所の共有をしておくと「まさか」のときに慌てずにすみます。
「生前整理」や「終活」は、まだまだ先だと思っていたけれど、夫は大事な個人情報を私にちゃんとわかる形で管理していました。
こんなことで、役に立つ日は来てほしくなかった。連絡帳も、貴重品も、見たくなかった。
でも、これが夫から私への最期のお願いごとなのでしょう。
「やることはやっておいたからな。あとは頼むよ!」
悲しいけれど、がんばるしかない。妻、喪主の責任を果たすことが、夫への恩返しなのだと思いました。
【佐藤由香さん】
生活情報ライター。1968年埼玉県生まれ。編集プロダクションを経て、2011年に女性だけの編集ユニット「シェルト・ゴ」を立ち上げる。料理、片づけ、節約、家事など暮らしまわりに関する情報を中心に、雑誌や書籍で執筆。