●離婚後、「背水の陣」でがむしゃらに働いて
――離婚後は、化粧品会社で正社員として働いていたとのことですが、42歳で主婦からフルタイムの営業職になるのは大変だったのでは。
「元々働くことは好きだったんです。けれど、私が結婚した頃は寿退社が当たり前の時代でした。仕事を続けるなんて考えたこともありませんでした。子どもが小さい頃は、ママ友と内職をやったり、多少手がかからなくなったらパートに出たりして。
化粧品会社の営業は、定時に帰れることもないし、土日も家に仕事を持ち帰ったりして、今でいう“ブラック”な働き方だったかもしれませんが、“私にはこれしか道がない”という想いでやっていました」
――「背水の陣」ですね。
「まさにそうです。まったくの素人から必死で化粧品のことを勉強して、当時は夢にまで仕事のことが出てきました(笑)。でも、実績で評価されるのでモチベーションも上がるし、契約社員から正社員になれましたし、今の私があるのはあの時期があったからこそ。大変でしたが楽しかったですね」
すべての画像を見る(全6枚)――充実した生活を送っていらっしゃいましたが、そこから体調を崩されてしまった。
「上から“所長になってほしい”と言われ、就任したんですが、なにしろ求められることがこれまで以上に増えて、パソコンも苦手だし、私には無理だと悩んでいました。それが52歳くらいかな? ちょうどその頃、めまいで立てなくなって病院に行ったんです。最終的に婦人科にたどり着いたら、子宮がんの手前だった。
病院の先生にも『自分の体をいちばんに考えた方がいいですよ』と言われたこともあって、平社員におろしてもらったんです。当然お給料は下がりますが、病気になってしまってはそれどころではありませんから」
――それで、57歳で退職することになったんですね。
「できれば、年金を貰う60歳までは勤めあげたかったんですけど、大切なのは自分の体。それにまだ50代だったから、60代よりは再就職の可能性もあると考えたんです。
とはいえ退職後の最初の職場は時給950円のパートタイムで、手取りが急激に減ったことに、最初は後悔もありました。会社員時代もずっと節約して暮らしていたけれど、収入に余裕があるのとないのでは、節約に対する心持ちがまったく違う。60歳になって正社員で働いてた頃の年金基金がもらえるようになり、ようやく気持ちもラクになりました」
――40代での離婚、再就職から、環境の変化も続いて、今ようやく落ち着いたということですね。
「あの頃は日々のことに精一杯でしたね。先のことなんて考えられなかった。でも、本にも書いたのですが、“どうしようもなくなったら死ねばいい”と思ったら、気持ちがスッと晴れたんです。本当に死にたいわけではなく、そう思うことで、開き直れたのでしょうね」
40代から人生の転機を迎え、苦労もあったからこそ現在があるというショコラさん。そのポジティブさに勇気づけられます。
そんな彼女の、自分の手で生活をダウンサイジングさせ、人生をクロージングしていく、「前向きな生前整理」というべき生き方は、私たちにとってもヒントがいっぱいです。
【ショコラさん】
60歳だった2016年にブログ「
60代一人暮らし 大切にしたいこと」をスタート。小さい暮らしを大切にする姿勢が共感を呼び、月間60万PVの人気ブログに。2019年、著書『58歳から日々を大切に小さく暮らす』(すばる舎刊)を出版