「子どもを産むのにはタイムリミットがある」ということについて、聞いたことがある、なんとなく知っているという方も多いのでは。そして、出産の際にリスクを伴う可能性が高まる年齢として「40代」という漠然とした数字が広く知られています。
40代からの出産が具体的にどのようなリスクを伴う可能性があるかについて、杉山産婦人科理事長で、不妊治療の専門家である杉山力一先生に伺いました。
「いつか子どもを」と思っている人は要チェック!40代出産の現状について
高齢出産が増えています。今回は、40代からの妊娠・出産(初産)について、現在どれだけの方がご出産に成功されているか、心掛けておいた方がいいことはあるかなど、詳しくお伝えいたします。
●40代の妊娠は増えている?どのくらいの割合いるの?
まずは、現在どれほどの方が40代以上での出産を経験しているかについて、数字で見ていきましょう。
はじめに「高齢出産」の定義として、一般的に「35歳以上で出産を経験される方」を指すとされており、2016年に生まれた赤ちゃんのうち約30%が高齢出産によって生まれたという調査結果が出ています。
高齢出産を経験された方の年齢をさらに細かく分けると、30代後半(35~39歳)が最も多く、出生数の全体の約20%を占めています。対して、40代以上の出産は出生数の全体の約5%と、30代後半に比べて低い数字となっています。
ただ、1990年代には40代での出産は出生数全体のうち約1%と、現在に比べてさらに低い数値だったことから、40代で出産を経験する方の割合は年々増加していることがわかります。
40代以上で出産をされる方の中には、初産である方もいらっしゃいます。また、体外受精などの不妊治療ではなく自然妊娠で赤ちゃんを授かり、帝王切開などをせず、自然出産で赤ちゃんを産む方も多くいらっしゃいます。
「40代での出産はリスクが大きい」という漠然とした認識ですと、40代での妊娠・出産はほぼ不可能である、というようなイメージを持ってしまうかもしれませんが、実際には40代で妊娠・出産(初産)を経験されている方も少なくはない、というのが昨今の傾向です。
●「いつか子どもを…」と思っている人は要チェック!40代の妊娠、考えられるリスクは?
ここまで40代で出産を経験される人の割合が増えていることについてお話してきましたが、「今の時代、40代までなら子どもを産める確率は高い」というわけではない、ということも覚えておきましょう。
女性の妊娠しやすさ・出産しやすさは、卵子の質や病気の有無、ほかにも様々な要因が関係しており、また個人差があるものであり、年齢ではかることはできません。
とはいえ、40代の方に比較的起こりやすい出産へのリスクがあるのも事実。どういったリスクがあるのか、確認しておきましょう。
40代以上のご出産の場合、考えられるリスクとして最も有名なものが「流産」です。20代・30代に比べて流産率が上がることについては、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。
流産は、医学的には全体の約15%の割合で起こるとされていますが、年齢が上がると増加する傾向にあり、30代後半で25%、40代前半で50%という数字も出ています。
妊娠高血圧症・妊娠糖尿病など、妊娠中にからだに異常がおこるリスクが高まることや、分娩時の出血量が20・30代の初産に比べて多くなることもあります。
《帝王切開の可能性が高くなる》40代での出産が初産の方の場合、分娩にかかる時間が長くなる場合があります。よって帝王切開を選択される方がほかの年代に比べて多いとされています。
●リスクも知ったうえで生活習慣の改善を進めましょう
40代の出産にはリスクが多いことは事実です。しかし、無事赤ちゃんをご出産されている方も多くいらっしゃいます。
現在40代で妊活中、またはこれから妊活をしようと考えている方は、なるべく早く病院を受診され、検査や問診などによってご自身の体のことをよく知り、かかりつけの医師と相談のうえ妊活を進めていかれることをおすすめします。
また、「いつかは赤ちゃんが欲しい」という漠然としたライフプランを持っている方は、40代の妊娠・出産についてのリスクを知っておくことが大切です。
そして、食事・睡眠・運動などといった生活習慣の見直しを図るなど、「いつか」のために今始められることから始めてみてもよいかもしれません。