●秋は甘酒粥をつくるには最適な季節。上手につくる方法
まず、残ったご飯1合(玄米でも白米でもOK)にお水を入れてお鍋の中で軽くお粥状になるまで炊く。温度が下がって50℃くらいになったら、市販の米麹をスプーンに2杯くらい入れて混ぜる。温度が高いうちに入れたら麹が死ぬのでご注意。真夏ならば、このまま数時間放置していたら小さな泡が立って、プチプチとかわいらしい音が聞こえてきたぞうと思ったら、すぐに完成。
だが…ここからが発酵のおもしろさ、そのまま放置すると発酵が進みすぎ、アルコール発酵してどぶろく状態になってしまっている。すっぱーくなって、うわー、発酵させすぎたー! おいしくないー! なんてこともたびたび。めげずにコツをつかむしかない。忘れがちな人は、冷蔵庫に入れると発酵はゆるやかになるので、早めに入れるのも手だ。
発酵を完全に止めるには1回沸騰させて麹菌を殺してしまうしかない。えー、それもったいないです。ですよねえ。腸活している方も多いが、生きた菌をそのまま腸にと思ったら、市販の甘酒ではほぼ熱処理をしているので菌はもういないのだ。だからこそ自分で少量をこまめにつくることをオススメしたい。
秋は甘酒粥をつくるには最適な季節。米を炊く塩梅で夜に仕込んで、そのまま放置して眠れば朝にはおいしくできあがっている。忙しい朝も、甘酒粥を食べると私はすごく調子がいい。まずお米なので腹持ちがいいし、胃の弱い人にもやさしい。ほんとうに発酵食品は裏切らんなあと思う。気温が低い冬は鍋ごとぽっかぽかのこたつの中へ。発泡スチロールにお湯を入れたペットボトルを入れてそこに小鍋を入れてつくるのも上手にできますよ。人間も甘酒も発酵しすぎない穏やかな秋がいいですねえ。
●こちらも発酵の産物!秋の味覚がつまったパン
すべての画像を見る(全5枚)どどーんと。こんな新米の季節にパンである。あなどるなかれ、米だけでない。ブドウ、柿、カボチャ、栗、サツマイモ。食べても食べても追いつかないくらいに秋はおいしい物が育つ誘惑の季節なのだ。
小さい頃から母がパンをつくってくれた。これもまた発酵の産物。お風呂場にナイロン袋をかけられたパン生地が静かに寝かされていて、お湯がかからないようにそっとお風呂に入ったものだ。今回は、中身はどっさりとサツマイモに!!
先にサツマイモと砂糖やシナモンやレーズンを一緒に煮たのをつくって食べていたのだけれど、飽きてきたのでパンをつくろうというわけだ。私の料理はいつも思いつきだ。
生地の中に昨日の残りのサツマイモを刻んで入れて、表面に卵を塗り、切り目を入れオーブンで15分も焼けば、ふっくらもちもちのサツマイモパンのできあがり!! ただでさえおいしい掘りたてのサツマイモが、パン生地に包まれて、それは新米に負けないおいしさだった。シナモンの香りも際立っている。
旬のものを食べると体が元気になる。その季節に実るということは、その時期の人や動物の体に必要な養分だからということだ。ちゃんと意味がある。すべてのものは繋がっている。私たちの体も野菜も発酵も季節とともに変化していく。季節を楽しむことこそが、食を楽しむ基本なのだと思っている。
【高橋久美子さん】
1982年、愛媛県生まれ。チャットモンチーのドラムを経て作家・作詞家として活動する。主な著書にエッセイ集「いっぴき」(ちくま文庫)、絵本「赤い金魚と赤いとうがらし」(ミルブックス)など。翻訳絵本「おかあさんはね」(マイクロマガジン社)でようちえん絵本大賞受賞。原田知世、大原櫻子、ももいろクローバーZなどさまざまなアーティストへの歌詞提供も多数。NHKラジオ第一放送「うたことば」のMCも。公式HP:んふふのふ高橋さんのエッセイ集
『捨てられない物』は、高橋さんのHPにて発売。