作家・作詞家として活躍する高橋久美子さんによる暮らしのエッセー。今回、高橋さんがつづってくれたのは、新米や秋の味覚でつくる甘酒粥とパンのお話です。

第5回「発酵の音がする」

暮らしっく
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●新米でぜいたくにつくる「甘酒粥」。甘酒が苦手でもおいしい

9月末、わが家の稲刈りがスタートした。点在する田んぼを合わせて約6反(1800坪くらいかな)の稲を刈るのは、なかなかに大変だけれど親戚が集まってみんなでいっせいに始まる稲刈りは1つの行事として楽しい。
なんだってそうだ。労働はみんなでやれば祭になる。1人は稲刈り機に乗って、その他は機械の入れない場所を鎌で刈っていく。

稲の中に子どもたちの頭が出たり引っ込んだりしている様子

今年は最大で10人も集まった。黄金色の稲の中に子どもたちの頭が出たり引っ込んだり。山から吹く風が稲穂を揺らし秋の香りを運ぶ。もうじき秋祭りだねえなんて話しながら、母が持ってきたお茶やおにぎりを食べながら。

収穫から数週間、乾燥も脱穀も終わって、

「やっと新米が食べられるぞー!!」「食べよう食べよう」

おいしいのなんのって。おかずはあえて食べないで、まずはそのままで、その次は塩むすび、そして梅干しを乗せて。永遠に米だけ食べられる。ですが…こんな食べ方も新米でぜいたくに試してみてはどうかな??

その名も、「甘酒粥!!!」

甘酒は意外にも夏の季語、〈飲む点滴〉とも言われ食欲のない時期にも気軽に食べられるうえ、もりもりと力が湧く日本の伝統食だ。わが家では夏はほぼ毎日、自作の甘酒粥である。発酵を操れるようになるとこっちのもの、米を炊くくらいに簡単につくれるようになる。

市販のものは甘くて甘くてどうも好きになれない。豆乳と割ってもそれでも甘すぎる。多分米麹を大量に入れているからだと思われる。

甘酒粥

ご飯と甘酒の中間みたいな食べ物、自称「甘酒粥」。とくに玄米でつくるのがさっぱりとしておいしい。姉の子どもたちは「お粥」と呼んで大好きだ。

ある日、発熱してしまった姪っ子に本物のお粥を食べさせたら「あれ、このお粥おかしいね、甘くないよ」と言った。君たちが食べていたのは甘酒粥、これがほんまのお粥なんよ…とは言わなかったけれど、甘酒といっても家のはほぼ、ご飯なのだ。米粒の食感も残っていてスプーンで食べるし甘みだってほのかなもの。甘酒が苦手という人も、きっと抵抗なく食べられる。