年齢を重ねるにつれ、ものとのつき合い方に悩む人は少なくありません。整理収納アドバイザーとして活躍する新田由香さん(60代)もそのひとり。新田さんは10年以上愛用した大型家具を手放したことで、「意外なメリット」があったといいます。今回、新田さんに、大型家具を手放したときのエピソードと、そのときの「気づき」について語ってもらいました。

※ ESSEonline10周年の記念特集「私と10年」。ESSEonlineライターが「この10年でやめてよかったこと」をテーマに書き下ろします。

りんご棚
大きな食器棚がなくなり、「リンゴ箱」で代用
すべての画像を見る(全5枚)

突然なくなった「お気に入りの食器棚」

棚がなくなった空間

その食器棚は、かつて家族にDIYでつくってもらったものでした。わが家のキッチンにぴったり収まる大きめのサイズで、木の温もりがあり、ずっと「私のお気に入り」だと思い込んでいたもの。

しかし、暮らしの転換期を迎え、その食器棚を手放さないといけなくなったとき、自分の心の奥底にあった感情に気づきました。気に入っていたはずなのに、不思議と「持って行かないで」という寂しさや未練はありませんでした。

「好き」の中に隠れていた“義務感”という重石

空間
わが家からなくなった「大きな家具」の数々

あんなに大切にしていたはずのものなのに、なぜこれほどすっきりした気持ちになれたのか。静かになったキッチンで、以前は棚があった空間を眺めながら、自分の心と向き合ってみました。「なぜ、こんなにホッとしているんだろう?」と…。

そこで気づいたのは「せっかくつくってもらったのだから、使わなきゃ悪い」「大切にしなきゃいけない」という、心のなかにこびりついていた気持ちでした。それは一見、つくってくれた相手を大切にする、優しさや美徳のようにも思えます。

けれど、じつのところは、自分自身を少し窮屈に縛りつけていた「義務感」という名の重石だったのです。

ものがなくなってみて初めて、「本当に好きだったのだろうか?」それとも「好きだと思い込もうとしていただけなのだろうか?」という、自分の本音に気づくことができました。

優しさというオブラートに包まれた義務感は、知らず知らずのうちに私の心を窮屈にさせていたのです。