女性皇族として初めて博士号を取得され、『赤と青のガウン オックスフォード留学記』がベストセラーとなった三笠宮家の彬子女王殿下。皇室でのお正月の過ごし方や日本の文化を守るご活動について伺いました。
すべての画像を見る(全7枚)お正月にお餅をいただく、その特別な意味とは
――私たちにとって、お正月といえば初詣や、おせち料理をいただくのが一般的な過ごし方のように思いますが、彬子さまはお正月をどのようにお過ごしでいらっしゃるのでしょうか。
彬子女王殿下(以下、彬子さま):1日に新年の祝賀で宮殿に伺い、2日に一般参賀、その日の午後にはお年始のお客さまがお見えになります。3日は元始祭と各宮家のご挨拶回り、4日があいて、父(故・寬仁親王殿下)がご存命のときは、ご誕辰(たんしん)が1月5日でしたので、5日にお年始と併せてご誕辰のお祝いを述べにこられるたくさんのお客さまをお迎えしていました。その後、7日の昭和天皇祭までが一連のお正月、というような感じがいたします。
――かなりご多忙でいらっしゃるのですね。そんななか、楽しみにされていることはありますか?
彬子さま:私は新年に宮殿でいただく御菱葩(おひしはなびら)が子どもの頃からとても好きで、こちらをいただかないとお正月が来た気がしません。御菱葩は、新年の和菓子である花びら餅の原型です。円形の白餅と菱形の小豆のお餅を組み合わせて二つ折りにし、ゴボウと白みそを包んだもので、齢を固め、長寿を願う「歯固め」の儀式にちなむとされています。花びら餅には求肥(ぎゅうひ)が使われていますが、御菱葩は普通のお餅です。
――お餅には、なにか特別な意味があるのでしょうか。
彬子さま:お餅というのは、神さまからの授かりもので、それを食べるということは、神の力を体内にいただき、生命力を高めるという意味があったと思われます。また、お餅は歯固めの意味をもつものなので、新年に歯ごたえのあるものをいただいて齢を重ねるという意味でも、お正月には欠かせないものなのです。お年玉も、もとはお餅を配っていました。「年玉」は「年魂(としだま)」で、元旦の日の出とともに家々に降りて来られる年神さまからの賜りもの。家族の数だけお餅を神棚にお供えし、そのお下がりを家長が家族に1つずつ配っていました。
――お正月にお餅をいただくことには、そうした大切な意味が込められているのですね。
彬子さま:お正月の行事には、日本の伝統文化が残っています。たとえば、今、私たちは誕生日に年を取るものだと思っていますが、旧暦を使っていたときは新年に1つ年を取っていました。だからこそ、齢を重ねるということでお餅をいただいたのです。また、お屠蘇(とそ)も、「屠」は「ほふる」ですから、「一度死んでよみがえる」という意味があり、邪気を払う飲み物です。もともとは若い人が年長者に注いで生気を分け与えるという意味をもつものでした。このように、物事が行われてきているのには理由があります。それを知ると納得ができますし、納得できるとそれを大切にする気持ちが生まれます。そうすることが、日本文化が未来に残っていくことにつながるでしょう。お正月にお雑煮やお屠蘇をいただきながら家族で話をすることが、日本文化を残すきっかけになればいいなと思います。


