伝統を担う者として日々の務めを果たしていく
すべての画像を見る(全7枚)――彬子さまが、今後伝えていきたいことにはどのようなものがありますか?
彬子さま:私自身、まだまだ知らないことばかりです。たとえば、「皇族はなぜ帽子をかぶるのか」とある方から尋ねられたのですが、私はそんなことを考えてみたこともありませんでした。そこで、祖母である三笠宮妃殿下に伺うと「帽子は日よけなのよ」とお答えくださいました。帽子は日をよけるものなので、室外ではかぶり、室内では脱ぐものです。ただ、女性の場合、帽子はファッションの一部とみなされるので、室内でも脱ぐことはしないのです。また、夕方4時以降の行事の際には、日をよける必要がないのでかぶりません。ずっと「そういうしきたりだから」と続けてきましたが、妃殿下の「日よけなのよ」のひと言で納得がいきました。帽子をかぶる意味がわからなければ、「時代錯誤かもしれない」と思ってしまっていたかもしれません。でも、意味がわかるとスッと自分のなかに入ってくるので、「継承していきたい」と思います。
そう気づくと、皇室の行事や習慣など、まだまだ知らないことがたくさんあります。たとえば、神社に参拝するときに皇族の方々が二礼二拍手一礼をしないのはなぜか。また、皇族殿下がお隠れのときに、お供えでいただくお干菓子が紅白なのですが、それはなぜか。私もいろいろな方に聞いて、それぞれご意見があるのですが、まだはっきりした答えが出せていません。「なぜ?」と疑問をもち、自分で調べ、正しい意味を知っていく。そして伝えていく。日本の伝統文化を未来に残すためにも、私自身、その姿勢を忘れずにいようと思っています。
彬子女王殿下、待望の新刊が発売。彬子さまが大学などで講義されたものをまとめた7つの「特別講義」を収録。神道と日本文化、大英博物館の「日本」コレクションなど、まるで講義を受けているかのような臨場感をもたらしてくれる1冊です。

日本文化、寄り道の旅~彬子女王殿下特別講義~
彬子女王殿下(あきこ じょおう でんか)
1981年(昭和56年)、寬仁親王殿下の第一女子として誕生。学習院大学在学中に1年、卒業後に5年、計6年間にわたり英国オックスフォード大学マートン・コレッジに留学。在外の日本美術コレクションの調査・研究にあたり、2010年(平成22年)には、女性皇族として史上初となる博士号を取得。京都産業大学日本文化研究所特別教授、國學院大學特別招聘教授など兼任し、多くの大学で講義・講演を行う。2012年(平成24年)、子どもたちに日本文化を伝えるために一般社団法人「心游舎」を創設し、全国各地で活動を続ける。著書に『赤と青のガウン オックスフォード留学記』(PHP文庫)など多数

