近年、緑を植えない家をよく見かけます。「緑は好きだけれど、雑草が心配で…」と舗装だけの味気ない外構にせざるを得ない場合もあるでしょう。 でも、たとえシンボルツリー1本植えるだけでも、家がグッと豊かに見えてくるもの。緑は「家をすてきに仕上げる魔法」といってもよいかもしれません。 そんな緑がもたらす効果について、一級建築士・新井崇文さんが、設計した事例をもとにご紹介します。あわせて、雑草との上手なつき合い方についても!新井さんが実践しているノウハウも紹介してもらいました。
すべての画像を見る(全13枚)家に緑を植えると、さまざまなメリットと効果がある
(1)外観・内観がすてきになる
家に緑を植える効果としてまず挙げられるのは、外観・内観とも見栄えがよくなることです。
こちらは緑を植える前の写真。この時点ではまだ少し味気ない外観、といった印象です。
こちらは緑を植えて10年程経過した写真。樹木が青々と茂り、ツタ類が板塀をはい上り、家と緑が融合したかのよう。うるおいのある景観になってきました(ただしツタ類の有無は人により好みがありますので、あくまで住まい手さんの好みに合わせた計画がよいでしょう)。
次はリビングダイニングからの内観。こちらは庭に緑を植える前の写真。
こちらは庭に緑を植えたあとの写真。そよ風でゆらゆらと揺れる葉が目を楽しませます。木漏れ日が白壁に陰影を描き、うるおいのある景観ができあがりました。
新緑の頃は、よりいっそう緑が鮮やかに。空間自体はシンプルでも、そこに緑があることでうるおいと深みのある景観が実現できます。
(2)季節の変化を楽しめる
家に緑を植える効果としてもうひとつ挙げられるのは、季節の変化を楽しめることです。
樹木には常緑樹と落葉樹があります。常緑樹は一年を通じて変わらぬ緑を維持できます。一方、落葉樹は新緑から紅葉まで色合いの変化を楽しむことができ、冬には葉を落として住まいに日差しを入れてくれます。
南側の庭には落葉樹がおすすめ。春から夏にかけては新緑が鮮やかで、日射をさえぎり、やわらかな木漏れ日もつくってくれます。
秋になれば紅葉が楽しめます。落葉樹を1本植えるだけでも、季節の変化を十分に感じることができます。
花も季節の移り変わりを気づかせてくれます。
高木から低木、地被類まで、さまざまな樹種を少しずつでも植えれば、時期ごとに色とりどりの花が咲き、季節の変化を楽しめます。
花の咲く木をアプローチに植えるのもおすすめ。日頃のあわただしい日常でも、家を出るとき、帰るときに、ふと花が咲いているのを見つけただけで、存外うれしい気持ちになるものです。
雑草との上手なつき合い方を解説
(1)雑草を増やさないためには、はじめが肝心!
「家に緑を植える効果はわかった。でも雑草が心配で…」という方もいるでしょう。そんな雑草との上手なつき合い方について、筆者が自宅で実践しているコツをご紹介します。
雑草を増やさないためには、はじめが肝心。入居して1年目の春夏には、土壌にもともと含まれている種から雑草が生えてきます。もしこれを放置してしまい、雑草が育ち、花が咲いて実がなり種がバラまかれてしまうと、2年目にはさらに多くの雑草が生えてきてしまいます。
そうならないよう、雑草が生えてきたら小さいうちに抜いてしまうことが肝心。雑草も小さいうちであれば、ちょっと手でつまむだけで容易に抜けます。
ちなみに、筆者の自宅の敷地(面積40坪弱)では、1~2週間に1度、雑草を抜いてまわっていましたが、毎回10分くらいの手間ですんでいました。そして、1年目にきちんと雑草を抜いておけば、2年目、3年目と次第に雑草自体が減っていきます。
(2)高木・低木・地被植物を組み合わせ、地表面をカバーする植栽計画を
雑草が生えにくい植栽計画も大切です。日当たりのよい地表面が多ければ、それだけ雑草が生えてきやすくなります。従って、高木・低木・地被植物を組み合わせて、なるべく地表面を覆い日影をつくってあげることが大切です。
さらに、地被植物(地表面を覆う草)をなるべく多く植えて、物理的に土を覆ってしてしまえば、雑草は生えにくくなります。
物理的に土を覆ってしまう手法として、バークチップや砂利などのマルチング材(地表面を覆う材)でカバーしてしまう手もあります。こうすれば雑草の種が飛んできても発芽しにくくなります。
住み始めて10年が経過した筆者の自宅では、生い茂る樹木による日影や、地被類や落ち葉で地表面が覆われている状況により、現在、生えてくる雑草はかなり少なくなっています。
緑のある家は歳月とともに魅力と価値が上がる
建物は年月とともに古びていく一方、植栽は年月とともに成長し豊かになっていきます。「緑のある家は歳月とともに魅力と価値が上がる」といっても過言ではありません。
せっかく緑を植えるのであれば、家と緑を同時に計画すると、より効果的です。また、植栽計画は敷地状況や住まい手の好みによってもさまざまです。好みのあう建築士に相談しながら「緑のある家」のイメージについて思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。