日本の半導体産業の復活はあるのか
すべての画像を見る(全3枚)そんな日本の半導体産業に、今転機が訪れようとしています。
今、世界の半導体企業の工場が、日本に進出しています。台湾のTSMCは熊本に新しい工場を建てました。熊本県菊陽町、人口4万3千人ほどの小さな町に、世界一の半導体メーカーの工場が建ったのです。
あまりの衝撃に、熊本では「黒船」がきた、なんて言われたりもしました。それまで過疎化に悩んでいた地域に労働者が流れこみ、新しいマンションが次々と建ち、飲食店は繁盛し、さながら「シリコンバブル」の様相を呈しました。
このほかにも、広島、宮崎、三重、石川、山梨、岩手などの地方都市に次々と半導体の工場が建設されています。まさに今、日本は半導体工場の建設ラッシュにあるのです。
そのなかでももっとも注目されているのが、北海道千歳市に工場を建設している「ラピダス」です。
●世界最先端の半導体をつくろうとしている「ラピダス」
このラピダスは日本の会社で、今大きく期待されています。なぜかというと、このラピダスは世界でもトップクラスの最先端半導体をつくろうとしているからです。
今のところ世界でもっとも進んだ半導体は、台湾のTSMCがつくる3ナノの半導体です。
しかしラピダスは、この3ナノをも超えた2ナノの半導体の製造にチャレンジしようとしています。世界でまだだれも成し遂げていない、2ナノの半導体をつくる工場を北海道千歳市に建て、2027年までに本格的に稼働させるとしているのです。
こんな話を聞いているとなんだか夢のある話で、日本の半導体産業の未来が明るいように見えてきますね。たしかにそういった前向きな意見も多くみられます。ラピダスのことを、「日の丸半導体の復活だ」なんていう人もいます。
日本で半導体が生産できれば、日本に活力が生まれる
しかしその一方で、否定的な意見も多くみられます。まず、日本が今国内で生産しているもっとも進んだ半導体は40ナノ。ナノという単位は、小さくなればなるほど最先端であるということを示すので、40ナノから2ナノというと、かなりの開きがあります。そのため、「本当にそんなことできるの?」という懐疑的な意見もあります。
また、今までの半導体は、7ナノまでの開発に成功して、その次に5ナノに挑戦、5ナノに成功して、そのあとに3ナノに挑戦、というように段階をふみながら進化してきました。ですから、段階をふまずにいきなり2ナノなんてできない、という厳しい意見もあります。
このように課題はあるのですが、本当に実現できたら夢のような話です。もし実現すれば、外国に頼らず日本で半導体を生産できることになるので、外国で万が一のことが起こった場合にも備えられます。
また、新しい工場の多くは地方に建てられているので、人口減少や過疎化で悩む地方にとっても新しい活力となります。大都市だけでなく、日本全体が盛り上がってくれたら、それはとてもすばらしいことです。
私たちとしては、日本の半導体業界がこれからどうなっていくのか、注目してみていきたいですね。
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