年齢を重ねるうちに、知らず知らずのうちに背負ってしまった「役割」や「思い込み」。それらを手放すことで「身軽に生きられる」と話すやましたひでこさんに、自由な60代を迎えるために必要な「断捨離」について伺いました。
すべての画像を見る(全3枚)「更年期」は、背負ってきた役割から卒業するとき
年齢や状況、家族構成…。そのときのライフステージによって、必要な「もの」は変わってきます。だからこそ、年代に応じて、今の自分にとっての要・不要を見極めることが大切。なかでも、女性にとって大きなターニングポイントとなるのは「更年期」だとやましたひでこさんは話します。
「更年期というのは『役割の卒業』でもあるんですよね。多くの女性は妻、母、学校の役員、職場での肩書き…と、大きいものから小さいものまで、さまざまな役割を背負ってきたはず。更年期は、その役割から卒業して自分を取り戻していく時間でもあるんです」
体調の変化とともに、気持ちも揺らぎがちな40〜50代。その時期を乗り越えていくことで、自分らしい60代を過ごせるように。
「30代から40代前半までは仕事や育児に精いっぱいだった人も、40代後半から迷いが出てきて、さらに50代になると『私の人生こんなものなのかな…』『いや、こんなものじゃないはず』と葛藤がはじまる。そうした時期をうまく乗り越えられずに、子どもが巣立って『空の巣症候群』になったり、親の介護が始まってしまったり…。そんな60代はさびしすぎますよね? 更年期はある意味、産道みたいなもの。産道は暗いけれど、その暗くてつらい期間を越えることで、新たに生まれ変わることができるんです」
ものと向き合うことで、「本来の自分」を取り戻せる
「ライフステージが変わって、あらためて身のまわりにある『もの』と向き合ったとき、『自分が好きで選んだものがひとつもない!』と愕然とする人は多いんです。親に薦められたから、まわりにいいと言われたから、家族が必要だから…。そうやって人の基準でものを選んできた人は、自分のためにいざなにかを選ぼうとしても、決めることができない。好きなものを選び取る感覚がなくなってしまっているんですね。だけど、ものと向き合って『これは今の私にとって必要?』と自分の心へ問いかけることで、『私はこれが好きなんだ』と本来の感性を取り戻していくことができるんです」
そうやって「もの」を手放すトレーニングを重ねるうちに、不要な「コト」や「人間関係」も手放せるように。
「単なる『もの』を手放すことすら難しいのに、いきなり『コト』や『人間関係』を捨てられるわけがないですよね。でも、ものを通じて『なぜ私にとってこれが必要なんだろう?』『なぜこんなものにこだわっていたんだろう?』と自分の価値観を検証していくことで、今までの自分に課していた『制限』にも気づけます。たとえば、ずっと家族のためにごはんを作って、後片づけもひとりでして、『なんで私だけ…?』と孤独を感じていたとしますよね。そういう人も『片づけなんて後回しにして、みんなとくつろいで、テレビを見たっていいんだ』『家族にも手伝ってもらえばいいんだ』と思えるようになるんです」